絵本での受賞初! 第31回ドゥマゴ文学賞に堀川理万子『海のアトリエ』

文学賞・賞

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「ひとりの選考委員」によって選ばれるBunkamuraドゥマゴ文学賞が決定。第31回となる本賞に、堀川理万子さんの『海のアトリエ』(偕成社)が選ばれた。授賞式は10月26日(火)。前年と同様にライブ配信となり、贈呈式・受賞記念の対談が「Bunkamura公式YouTubeチャンネル」で配信される予定だ。

 受賞作『海のアトリエ』は、タブロー画家として活躍する堀川理万子さんの絵本。作者の堀川さんが幼少期に出会った近所の絵描きさんとの思い出から生まれた作品で、昭和30年代の神奈川県の海辺のアトリエを舞台にしている。ドゥマゴ文学賞31回の歴史で絵本が選ばれたのは初めてとなる。

 著者の堀川さんは、1965年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。画家として絵画作品による個展を定期的に開きながら、絵本作家、イラストレーターとしても作品を発表している。主な著作に『権大納言とおどるきのこ』『くだものと木の実いっぱい絵本』『おひなさまの平安生活えほん』『けしごむぽん いぬがわん』『びっくり まつぼっくり』(多田多恵子)『氷河鼠の毛皮』(宮沢賢治)などがある。

 今年選考委員を務めた作家の江國香織さんは、「堀川理万子さんのかかれた『海のアトリエ』を読めばすぐにわかる。一枚ずつすべての絵が、どんなに繊細に、静かに、かつ生き生きと、多くを語っていることか」と述べ作品の手触りを紹介、その上で「文章にされていない、そういう全部がここにあり、頁をめくるたびに目の前にひろがる。五感全部を満たされ、ここにいながらそこに連れて行かれる」と作品を評価した。

 今年で31回目を迎える同賞は、株式会社東急文化村が主催する文学賞。パリの「ドゥ・マゴ賞」(1933年創設)のもつ先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘することを目的に1990年に創設された。小説・評論・戯曲・詩を毎年「ひとりの選考委員」が審査し、年1回発表している。

 昨年は、敷地のはずれにあるコテージに閉じこもってしまった絶世の美女を外に誘い出すために、投宿していた7名の芸術家の挑戦を描いた物語『ホテル・アルカディア』が受賞。過去には町田康さんの『くっすん大黒』(第7回)、吉本ばななさんの『不倫と南米』(第10回)、エッセイでは平松洋子さんの『買えない味』(第16回)、評論では武田砂鉄さんの『紋切型社会』(第25回)などが受賞している。

Book Bang編集部
2021年10月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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