『親切なおばけ』
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なんとけなげなノノコちゃん 杉田比呂美
[レビュアー] 杉田比呂美(イラストレーター)
ノノコちゃんという小さな女の子が主人公です。若竹七海さんが書かれたお話は、ほんの少し昔、たぶん昭和の出来事でしょう。
ノノコちゃんは他の子供達から「おばけ屋敷」と言われる古い家に住んでいます。
おばけと呼ばれ、友達のいないノノコちゃんには優しいおじいさんがいます。友達がいない事をおじいさんに問われると、平気! と強がるノノコちゃん。おじいさんは、「それなら親切なおばけになってはどうかしら」と提案します。
その言葉を最後におじいさんは亡くなりました。ノノコちゃんは、おじいさんの言葉通り、親切なおばけになるべく、涙ぐましい行動に出ます。
若竹さんらしい軽妙な筆致でノノコちゃんの一生懸命な努力の物語が続きます。大人から見たら、それがとってもズレていたり、とんでもないいたずらに思われても、ノノコちゃんは頑張ります。
そう、子供にとってみれば、ちゃんと理由があるのです。ただうまく言葉に出来ないだけなのです。大人達の暗黙なルールとは全く別の次元でいろいろ考えているのです。
この絵本は、十五年前に出版されました。今回読み返してみても、時代の流れは感じさせず、可笑(おか)しくて笑いたくなり、ノノコちゃんのけなげさに、ちょっぴりせつなくもなります。
絵を描くにあたっては、ノノコちゃんとおじいさんの心温まる交流を中心に描きました。おじいさんは博物学者なので、きらきら光る石や、動物の剥製など、めずらしい物がたくさん部屋にあります。それを絵にするのは、とても楽しい時間でした。後々、おじいさんのコレクションは、物語に重要な役割を果たす事になります。
ノノコちゃんの子供らしい一途さを、若竹さんの文章と、絵で楽しんでいただけたら嬉しいです。