『幸いをいただきまして このひとときを大切に』
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<東北の本棚>荒行通して得た気付き
[レビュアー] 河北新報
奈良・金峯山寺で、1日48キロの険しい山道を1000日間歩く荒行「大峰千日回峰行」を、9年がかりで達成した大阿闍梨(あじゃり)の著者が語る人生の処方箋だ。
本書は「歩き続けると見えてくる」「人生は信仰」「心をこめて生きる」「すべてはあなたから始まり、あなたにかえる」の4章で構成する。荒行を通して得た気付き、困難に直面したときの心の持ちようを、易しい言葉で語り掛ける。
例えば、人間関係について。私たちがこの世を生きる上で直面する悩みの一つでもある。荒行を乗り越えた著者も例外ではなかった。「人間関係は一つの行」と言い切っている。
誰かの不快な言葉や態度に傷ついた時は心を磨く契機と捉え、恨まず、嫌わず、広い心で許すのが肝要だと説く。分け隔てなく優しい言葉を掛ければ、回り回ってわが身に返ってくる、とも。
人生は晴れの日もあれば雨の日もある。心がくじけそうな時にページをめくれば、ぬくもりある言葉が寄り添ってくれることだろう。
著者は1968年仙台市生まれ。高校卒業後、金峯山寺で出家得度。2003年に仙台市太白区秋保町に福聚山慈眼寺を開山し、住職を務める。(長)
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幻冬舎03(5411)6222=1430円。