不調の原因は「減塩」によるミネラル不足かも? 健康維持ために知っておきたい「塩と身体」の関係

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適切な質&量の「適塩生活」が免疫力を高める(写真:photeAC)

 緊急事態宣言が解除され、出社や外出の頻度も高まり、年末に向けて会食の予定が入っている人も多いでしょう。

 日常が戻ってきつつあることをうれしく思う反面、その忙しさに心も身体も疲れやすくなっている、そんな声も聞こえてきます。

 こうした疲労が蓄積しやすい時期を健康的に過ごすために、『免疫力を高める 塩レシピ』(あさ出版)の著者でソルトコーディネーターの青山志穂さんは、次のように言っています。

「コロナ禍で健康的な生活を送らなければと、過度な減塩生活をしている人が増えている。その結果。マグネシウムなどのミネラルが不足し、疲れやすくなっている人が後を絶たない。それどころか、不調を訴える人も出てきているんです」

 かつては罪人の気力、体力を奪うために、「塩抜きの刑」があったとか。それだけ、人間の心と体には「塩」が必要だということです。

 そこで、健康の維持や感染対策としての免疫力の向上のために「塩」の活用法、正しい知識、選び方について、青山さんにお話しいただきました。

日本人は常にミネラル不足

 日本人のほとんどが、マグネシウムなどのミネラル不足です。

 日本の水は軟水でミネラルが少ないうえに土壌もミネラルが少ないため、そこに育つ農作物に含まれるミネラルもおのずと少なくなるためです。

 どんなに一生懸命食材で摂り入れようとしても、なかなか十分な量を得ることができないのです。

 さらに、ミネラルは体内で作り出すことができないうえに、体内に留めておけないので、排泄の際、活動に不必要だったミネラルも一緒に排出されていきます。

 また、仕事や人間関係のストレスによっても、体内のミネラルは大量に消費されてしまいます。


現代人はマグネシウムなどミネラル不足

 私たちの身体は代謝を繰り返して生命活動を維持しています。代謝には「酵素」が必要であり、その酵素が円滑に働くには、ミネラルが欠かせません。身体にとって、ミネラルはエンジンオイル、といった存在といえるでしょう。

 ミネラルが足りないと、身体のさまざまなところにダメージが出てしまい、免疫力が低下してしまいます。お肌の調子が悪い、手足が冷えてつらい、朝起きてもしばらくの間ぼーっとしてしまう、体力がなくて疲れやすい、イライラしやすい、代謝が悪くて太りやすいなども、その一環です。

 かつて日本では、囚人の食事に塩を使わずに、じわじわと気力と体力を奪うという刑罰が行われていました。塩を極端に減らすと、人の身体には悪影響があるということです。夏になると、意識して塩分を摂取する必要があるのも、体内の塩分を減らしてしまわないためなのです。

 つまり、意識してミネラルを摂り入れていかないと健康的な生活を送ることが難しくなってしまうのです。


ミネラル不足は心にも体にも影響が

塩は人間の心と身体にとって欠かせない存在

 そんな私たちを救ってくれるのが、ミネラルの塊である「塩」なのです。

 塩には、海水からできる「海水塩」、地中から掘り出される「岩塩」、塩の湖からとれる「湖塩」があります。海水には、地球上の元素(ミネラル含む)がすべて含まれているので、それが固まってできた塩には、その元素が多様に含まれているからです。

 そのため、古来より、私たち人間の生活には「塩」が大きく関わってきました。

 そもそも地球上に初めて誕生した生命は海の中でしたし、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんを守る羊水は太古の海と同じ成分でできています。

 古代ローマでは、塩とお金が同じ価値があり、兵士たちには塩でお給料が支払われていました。このことを、「salarium サラリウム」といい、「お給料」を意味する「salary サラリー」の語源になったと考えられています。

 現在も、欧米では、塩を活用した健康法が多く親しまれ、塩の取り合いも行われています。

適正な質、適正な量を摂取する適塩生活が必要


青山志穂(あおやましほ)

 厚生労働省では、1日の塩分の推奨摂取量(摂るべき塩の量)として、成人男性で7.5g、成人女性で6.5gと定めています(2021年7月現在)が、人により身長も、体重も、基礎代謝量も体質も違いますから、必要な塩分摂取量も当然、1人ひとり違います。そして、同じ人でも、体調や汗をかいた量によって、多く塩分を取らなくてはいけない日もあれば、少なくてもよい日もあります。夏場に塩を摂ることが推奨されるのも、そのためです。今回執筆した『免疫力を高める塩レシピ』の監修をしてくださった医師の白澤卓二先生も、「減塩=健康」とは言えないとおっしゃっています。

 また、厚生労働省の推奨する食塩摂取量もそうですが、これまで「塩」について論じられる際、そのほとんどが、ナトリウムだけでつくられた塩などで議論され、塩の質まで問われてきませんでした。

 しかし、本来の塩は、ナトリウムだけでなくほかのマグネシウムなどのミネラルも含んでいます。さらに、塩はそれぞれ、味も形も違いますし、栄養分も違います。

 適正な質、適正な量の塩をきちんと摂取する、つまり「適塩」生活をすることで、私たちは健康的な生活を送ることができるというわけです。

ミネラルが足りているかどうかがわかる「1口の塩水」

 今の自分の身体が、ミネラル(塩)が十分に足りている状態か、もしくは塩が必要な状態かを知る方法がありますので、ご紹介しましょう。

 それは、約0.9%の塩水(生理食塩水)を1口飲むことです。

 人間の身体はとても高機能にできており、その時必要とする栄養をおいしく感じるようになっています。スポーツドリンクを運動時に飲むとおいしくてゴクゴク飲んでしまえるのに、汗をかいていないときに飲むとベタベタとして甘じょっぱく感じ、あまり多くは飲めないものです。

 塩水を1口のんで「おいしい」と感じるのであれば、あなたの身体は、現在、塩が必要な状態であるということです(味覚障害や痛覚がマヒしている場合を除く)。意識して、塩を摂取することです。

 逆に「しょっぱい」と感じるということは、すでに体には十分な塩分があるということなので、塩分は抑えめに過ごしましょう。

【「塩水」の作り方】
1 500ミリリットルの水を用意する(500ミリリットルのペットボトルを利用すると便利)
2 塩4グラム(小さじ1杯弱)を1に入れてよく振る
※塩の種類によって異なる。
※塩水は冷蔵庫に入れて保管し、2~3日で使い切ってください。

 ミネラルチェックは、「塩水」をペットボトルのキャップ1杯分程度を飲むだけでOK。

 昼間に塩水を飲むとしょっぱく感じたのに、夜、仕事を終えた後に塩水を飲むとおいしく感じることもあります。

 毎朝飲む習慣をつけると、その日の自分の状態を確認できますよ。

 最近は、スーパーやコンビニでも、たくさんの種類の塩が販売されています。せっかく手に入れやすくなっているので、塩の使い分けを楽しみながら、免疫力を高め、健康的な生活を送っていただきたいと考えています。

 多くのレシピでは、材料として「塩 〇グラム」とひと言だけ記されていますが、塩はたくさんの種類があり、それぞれ味わいも違います。つまり、どの塩を使うかでもお料理の味が変わります。

 新型コロナで落ち着かない日々、気づかないうちに心も身体も疲れが溜まっています。塩を活用して、身体も心も健康的でありたいものです。

 楽しく、上手に、塩を摂り入れていきましょう。

青山志穂(あおやましほ)
一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 東京都出身。2007年より沖縄県在住。慶應義塾大学卒業後、大手食品メーカーを経て、塩の専門店に入社。そこで塩の奥深さに目覚め、社内資格「ソルトソムリエ」制度設立のほか、人材育成、商品開発を担う。2012年、独立し、一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会を設立。日本初となる塩のプロフェッショナルを育てるべく、「ソルトコーディネーター」資格制度を立ち上げる。現在は、テレビ、ラジオ、雑誌などで塩の魅力を語るほか、全国の食品系メーカーと共同で商品開発や、有名シェフとのコラボレーション、お店にあった塩のセレクト&コーディネート、東京、沖縄、香港など各地で塩の講座を開催するなど、あちこち飛び回りながら、塩の名産地沖縄の塩をはじめとした世界各地の塩と、料理をさらにおいしくする塩の使い分けを研究し、日々、塩(適塩)を普及すべく活動中。

青山志穂(シニアソルトコーディネーター) 協力:あさ出版

あさ出版
2021年12月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

あさ出版

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