ひかえめなコミュニケーションの裏にある美学(写真:photeAC)
投手としても打者としても活躍する「二刀流」の選手として広く知られるだけでなく、アメリカン・リーグ最優秀選手に選ばれるなど、アメリカで大活躍中の大谷翔平選手。国民栄誉賞を辞退したことで、日本人選手の謙虚さに海外の人も驚いたといいます。こうした謙虚で、常に精進を怠らない性質は、日本人の魅力の1つです。
本記事では『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』の著者で、教育バラエティー番組「世界一受けたい授業」に出演し、外国人からみた日本を紹介するルース・マリー・ジャーマンさんに、実は評価されている日本の控えめなスタンスついて語ってもらった。
ルース・マリー・ジャーマンさん
ひかえめなスタンスが大好きな日本人
以前日本人の方から、「日本はアピールが下手」と言われたことがあります。
たしかに、日本人・日本企業はアピールが苦手なところもあります。
でも、実際は「さりげなくアピールする」「隠れて結果を出す」ことを好むだけのこと。日本人はさりげない、控えめなスタンスが大好きなのです。
宮崎県小林市で、小林市の魅力や観光客の受け入れ体制について提案するセミナーに参加したときのこと。セミナーの事前打ち合わせで、チームの1人から「多言語音声案内システム」について、参加者にプレゼンをしたいという話があったのですが、最終的には、成功例を紹介し、観光客対応の「1つの手段」として説明し、興味のある方には手書きの手紙を同封したパンフレットを送ることにしました。
日本では、プレゼンで「押し出す営業」をするよりも、「控えめな営業」が大切だと、滞在のあいだでよくわかっていたからです。
じつは、多くの外国人もこうした日本の控えめなスタンスを称賛し、かっこいいと思っています。
外国人の情報源となっているニュースサイト「Quartz」では、以前「ジャパニーズデニム」の特集が配信されていました。
「ジャパニーズデニム」は、世界中のデニムファンのなかでは、1つのブランドであり、ステータスにもなっています。
昔のようなカジュアルなジーンズと異なり、よく見ないと気づかないくらい濃い色のブルーデニムが、ビジネスパーソンの間でも人気があります。
アメリカのシアトルに住む弟の話によると、日本のジーンズをはいているとまわりから、「それは〇〇版ですか」と聞かれるそうです。ジャパニーズデニムについてくわしい人が世界中に増えているのでしょう。
この特集で強調されていたのは、高いクオリティのデニムを生産し、世界トップ10に入る企業の多くが日本企業であるにもかかわらず、日本企業は「どうやってここまで控えめな状態を保てているのか」ということでした。
控えめで、静かに大きな成果を出す日本人の姿勢を見ると、同じこだわりをもつ外国人もどこかでホッとします。来日して、居場所を見つけたという友人もいるのです。「ナンバーワン」をあえて主張したがらない日本人の気持ちに共感する人が世界中にいるのです。
日本人のみなさんは「アピール上手にならなきゃ!」とプレッシャーを感じる必要はありません。
目立たないこともすてきな美徳であることをぜひとも自負し、自信をもっていただきたいです。
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- 日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと
- 価格:1,430円(税込)
日本人が「YES」も「NO」もハッキリ言わない理由
「少々お時間をいただきます」
「調整中です」
「社内の関係部署の意見を聞いているところです」
こう伝えてグレーラインを上手に歩む日本人を、いつも感心して見ています。
「YES」とも「NO」とも明言しないのは、日本人の特技の1つです。
日本人が簡単に「NO」と言わないのは、できるかぎり相手の要望に応えたい、という思いが強いからではないでしょうか。むずかしいリクエストをもらったとしても、なんとかやれる方法はないかとあれこれ手を尽くす。
その結果、グレーな答えになるのでしょう。
日本人の意見の伝え方は独特です。
リクルートに入社したばかりのころ、こんなこともありました。
朝に同僚たちが自分の机で朝食をとるのを見て、わたしも大好きなチョコドーナツとコーヒーを買い、家でしているようにドーナツをコーヒーにポンとつけてデスクで食べていました。
すると、それを見ていた先輩から、
「ルーシー、日本人はそういうことをしないよ」
とたしなめられました。
生意気な新人だったわたしは、
「そうでもありませんよ。ざるそばも、つゆにつけて食べるでしょう? 日本人もしていますよ!」
と、つい反論してしまいました。
でも、先輩は「やってはいけない」と否定したわけではありません。先輩が言いたかったのは、その食べ方は行儀が悪いよ、ということだったのでしょう。
それなのに、「日本人もやっているじゃない!」と非難し、NOをつきつけてしまったために、コミュニケーションがそこで硬直してしまったのです。
あのとき、あんなふうに反論せず、
「そうなんですね。日本人はやらないんですね」
と言えばよかった。そうすれば、
「おもしろい食べ方ね。おいしいの?」
といった反応が返ってきたかもしれません。
あるいは、「机が汚れるから気をつけてね」のように、アドバイスの言葉がもらえ、もう一歩、深いコミュニケーションにつながっていたかも……。いま思えば、もったいないことをしたと悔やまれます。
「NO」ではない意図があったことを理解できず、反発してしまったことはほかにもあります。
以前勤めていた会社では、お客さまからクレームがあったときや、社内の別の担当者に負担をかけたときなど、「経緯書」の提出が義務づけられていました。
これは、どういう経緯でその問題が起きたかを報告する書類なのですが、どうしても「経緯書=おわび書」のように思えてならず、強く反論してしまいました。
「なぜ社内共有のためだけに、時間をかけて経緯書を書かなければいけないの? 口頭で説明して謝っておけばいいじゃない」と内心思っていたのです。
でも、いま自分自身が経営者になり、わたしの思いがいかに的外れだったか痛感しています。
経緯書はその担当者を非難するものではなく、問題の発端となった原因を究明し、再発を防止するためのものです(これは、海外でもよく知られている日本発の問題解決手法「KAIZEN(改善)」のしくみに似ています)。
つまり、経緯書は現場の従業員1人ひとりが当事者意識をもって作業を見直し、チームとして前に進むための有効な手段なのです。
日本人は、ものごとがうまく進まないとき、誰かを一方的に非難するのではなく、どうしたらよくなるかをみんなで前向きに考えています。
いまは「NO」という状況を避ける、日本人のすごさを実感しています。
ルース・マリー・ジャーマン(会社経営者)
米国ノースカロライナ州生まれ、ハワイ州育ち。1988年にボストンのタフツ大学国際関係学部から(株)リクルートに入社し、以来30年間日本に滞在。2011年まで(株)スペースデザインに在籍し、新規事業として、来日する外国人向けの家具付きサービスアパートメントを東京・横浜・ドバイにて開発・運営業務に携わる。1998年に日本語能力試験(JLPT)1級を獲得し、2006年に、宅地建物取引士となり、公益財団法人日本女性学習財団評議員、一般社団法人HRM協会の理事に就任。2012年4月より(株)ジャーマン・インターナショナルを起業。日本企業と外国人の潜在顧客をつなげるため、経営戦略と営業・広告活動をサポートしている。2018年に日本企業のグローバル化トレーニングを行う「Train to Globalize」事業も立ち上げる。高校・大学・リクルートシーガルズ(現オービックシーガルズ)でのチアリーダー経験を生かし、在日米国商工会議所のスペシャルイベント委員会の委員長、神奈川県地方創生推進員を務める。また、復興庁が実施する「新しい東北」プロジェクトの有識者として、全国の自治体・企業での講演活動を通して、日本が日本らしいグローバル化を果たせるよう、応援している。
ルース・マリー・ジャーマン(会社経営者) 協力:あさ出版
株式会社あさ出版のご案内
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