新潮ミステリー大賞の下読みぶっちゃけ座談会!
文学賞の選評では最終候補作品について様々な意見が交わされるが、そこまでたどり着くことができるのは応募作の中でもごくわずか。
どんな作品なら一次選考、二次選考を突破できるのか――。
今回は新潮ミステリー大賞で長年選考に携わってきた三人にその極意を訊いた。
座談会を通じて得られた「応募原稿の八箇条」も必見です!!
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予選委員がまず伝えたいこと
――今日はときわ書房本店の宇田川拓也さん、ミステリ評論家の千街晶之さんにご参加いただきました。弊社からは、本賞に立ち上げから関わり、昨年『書きたい人のためのミステリ入門』を上梓した編集者の新井久幸も出席します。この稿の最後で読者の実になる「応募原稿の八箇条」をご提案すべく、選考の裏側を伺えればと思います。
新井(編集者) お二人には本賞の第一回から一次選考に参加していただいています。これまで、下読みであげた作品が大賞を受賞したことはありますか。
宇田川(書店員) 第一回で大賞を受賞された彩藤アザミさんの『サナキの森』は一次選考で読みましたね。前回の最終候補作品も、一つ入っていました。
千街(書評家) 私は大賞受賞作はないけれど、最終候補作なら何度かあります。
新井 毎年二十作から三十作近く読んでいても、大賞受賞作とはなかなか出会えないんですね。長年下読みをされているお二人から見て、応募原稿がまず守るべきはどんなことでしょうか。
宇田川 募集要項をきちんと読む、ということですね。
千街 それは絶対です。そしてこれが意外と重要。
新井 確かに枚数が足りていなかったり、二重投稿であったり、募集要項を守っていない作品は意外とありますね。事務局には「できたところまで送ります」とか、締切後に「ここ差し替えてください」といった連絡が来ることもあります。応募規定を満たしていないものは選考の対象外ですし、締切を過ぎたら翌年に回します。そして選考に関しては、応募された原稿がすべて、です。
宇田川 初めて賞の下読みをやると決まったとき、ルールや作法はめちゃめちゃなのに、面白さは抜きん出ている、なんて作品も来るんじゃないかと期待したんです。だけど、全くそんなことはなかった……。選考ではちゃんとした作品が、ちゃんと上に行くんだと学びました。
新井 新潮ミステリー大賞は、原稿を印刷された状態で送ってもらうようにしています。お二人は体裁の面で気になるところはありますか。
宇田川 文章が読みやすいように、印刷してほしい‼
千街 応募原稿にはいろんなスタイルがあります。中には、字や行の間隔が空いていて余白だらけだったり、逆にページの上から下までぎっちりと文字が並んでいたりするものも。読みづらいと感じてしまうことも多いです。
宇田川 原稿用紙フォーマットの人は結構いますよね。作文用紙のような。それに、文章記号の使い方も気になります。三点リーダーを一字ずつ「・・・」と書いていたり、ダッシュや括弧の使い方が変だったり。表記のルールはネットで検索すればすぐにわかるはずなので、それらを踏まえて書いてもらいたいです。
新井 そしてとにかく誤字脱字を減らすこと。今時のワープロソフトには校正機能があります。それを使ってみるだけでいろいろと解決することはあると思うんだけど……。
宇田川 そういう細かいことに読み手はひっかかっちゃうんですよね。
千街 そうなんです。物語の世界にのめり込もうとしているのに、その度に現実に引き戻されてしまう。誤字脱字の怖さはそこです。作品を楽しみきれなくなってしまう。
新井 まずは基盤の部分をしっかりと固めてもらいたいですね。
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