【産経の本】『立教高等女学校の戦争』神野正美著

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■女学生たち動員の記録

立教高等女学校とは、現在の立教女学院(東京都杉並区)の前身となったミッションスクールだ。本書は太平洋戦争末期、軍の工場となった学校で極秘の作業に携わった動員女学生たちの知られざる記録である。

キリスト教の一教派「聖公会」が創立した立教高等女学校には、海軍で海図を作成する「水路部」の分室が設けられていた。同部の第二部長・秋吉利雄少将が聖公会の信徒という縁から生まれた。分室では海軍が航法に使う「高度方位暦」の作成に当たった。これは20分ごとの星の位置を記したもので、立教の女学生はその計算・清書に動員されたのだ。

モンペ姿の彼女らは礼拝も聖歌を歌うことも禁じられ、学業も奪われ極秘の作業に従事した。防空壕(ごう)の中で独自のごっこ遊びを編み出し、オシャレにも工夫しながら、空襲の恐怖と空腹をはね返してきた。著者は100人近くから証言を集め、作業の詳細や支え合って懸命に生きた女学生の姿を生き生きと再現した。

当時の女学生たちはいまや90歳を超え、取材後に亡くなった人も多い。現在も戦前の姿を留める女学院の礼拝堂や校舎に秘められた物語に今こそ耳を傾けたい。表題作のほか5編を収録。(光人社NF文庫・913円)

産経新聞
2021年12月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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