【話題の本】『現代ロシアの軍事戦略』小泉悠著

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■「弱い」軍の戦い方とは

今回のウクライナ危機を生んだプーチン体制下のロシアは、いかなる世界認識に基づいて、どう戦おうとしているのか。誰もが驚いた戦争をめぐり、昨年5月に刊行された新書がにわかに高い関心を集めている。

著者は、気鋭のロシア軍事・安全保障政策研究者としていまやテレビで引っ張りだこの小泉悠・東大先端科学技術研究センター専任講師。版元の筑摩書房によると、2月時点の累計発行部数は1万1000部。同月下旬のウクライナ情勢の急速な悪化以降、4回にわたって増刷され、現在6刷7万1000部に達している。

世界屈指の軍事大国であるロシアだが、印象的なのは「弱い」ロシア軍という視点だ。ソ連崩壊で超大国から転落したロシアは、政治・経済はもとより正規軍の質と量でも西側より劣位に陥った。だがいまだ自らの勢力圏とみなす旧ソ連諸国の民主化は認め難いため、西側から「戦争」を挑まれたという被害妄想的な認識になる。そこで浮上したのが、情報戦などの非軍事的手段を駆使した「ハイブリッド戦争」という手法だ。さらに大国間戦争で劣勢になった際は、戦術核兵器の使用も選択肢という。ロシアの「戦い方」を知る際に、必読の一冊だ。(ちくま新書・1034円)

磨井慎吾

産経新聞
2022年3月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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