【産経の本】『太平洋戦争運命の瞬間 決定的場面に遭遇した軍人の証言』神立尚紀著

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■そのとき彼らが見たもの

太平洋戦争で「運命の瞬間」と言える出来事を、当事者の貴重な証言を基に描いたノンフィクションだ。

原爆被爆直後に「黒い雨」の降る長崎上空を飛んだパイロット、開戦直前に真珠湾を偵察した5人の海軍士官、生還した人間魚雷「回天」搭乗員、海戦中に艦橋から海に転落した戦艦「比叡」乗組員…。いまや直接聞くことのかなわない15の決定的場面が再現されている。

著者の調査では真珠湾攻撃に参加した飛行機搭乗員765人のうち、開戦80周年となった昨年時点で生存を確認できたのは、わずか1人。本書に登場する証言者たちも、その多くが鬼籍に入っている。

長崎に原爆が投下された日、現地からわずか20キロしか離れていない大村基地には、新鋭機「紫電改」を擁する精鋭部隊が配属されていた。それにもかかわらず、なぜただの一機も迎撃に上がらなかったのか? 元隊員たちの回想は詳しく、無念さにあふれ、引き込まれそうになる。

著者は30年近くにわたり500人を超す戦争体験者から話を聞いてきた。忘れないのも繰り返さないのも語り継ぐのも、まず当時を「知る」こと抜きには成り立たない―。巻頭の著者の言葉が胸を突く。(潮書房光人新社・1980円)

産経新聞
2022年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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