【話題の本】『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』大木毅著

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■ウクライナ侵攻で増刷

絶滅戦争ともいわれる独ソ戦(1941~45年)の全体像を多角的な視点かつ駆動力ある筆致で描き出し、2020年の新書大賞に輝いた本書が注目を集めている。きっかけはもちろんロシアのウクライナ侵攻だ。実際に侵攻が始まると急激に動き始め、増刷を続けているものの注文に追いつかない状況だという。発行部数は現時点で17刷17万部に達した。

「独ソ戦は通常戦争を逸脱して絶滅戦争、絶対戦争へと突き進んだ戦争でした。今回の侵攻がもたらす、通常の戦争とは異なる、えも言われぬ皮膚感覚、あるいは直感から本書を手に取った読者も多いのでは」と担当編集者の永沼浩一さん。ロシアの軍事行動に「異様な執念」を感じる人々が、その理由を求めているのかもしれない。

独ソ戦といえば、ソ連の女性狙撃小隊の生と死を描き、今年の本屋大賞を受けた逢坂冬馬さんの小説『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)も見落とせない。永沼さんは相乗効果を感じるという。「逢坂さんの小説はミクロの視点から、本書はマクロの視点から独ソ戦を描いています。逢坂作品の前に、本書で歴史背景を把握しようという読者も多いのではないでしょうか」(岩波新書・946円)

桑原聡

産経新聞
2022年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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