【聞きたい。】渡邊崇志さん 『ゲストハウスがまちを変える エリアの価値を高めるローカルビジネス』

インタビュー

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ゲストハウスがまちを変える

『ゲストハウスがまちを変える』

著者
渡邊 崇志 [著]/前田 有佳利 [著]/宿場JAPAN [監修]
出版社
学芸出版社
ジャンル
工学工業/建築
ISBN
9784761528140
発売日
2022/04/04
価格
2,530円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】渡邊崇志さん 『ゲストハウスがまちを変える エリアの価値を高めるローカルビジネス』

[文] 寺田理恵(産経新聞社)


渡邊崇志さん

■下町の商店街が観光資源

下町の商店街にある「ゲストハウス品川宿」(東京都品川区)など小規模宿泊施設4軒を営み、空室時にはウクライナ難民ら困っている外国人の無料宿泊支援も行う。インタビューの日は、避難者に弁当を提供してくれる飲食店を探して地元商店街を回っていた。

「世界の人口が膨らむ一方、日本の人口が減り、努力しないと商店街は現状維持も難しい。多様な人を受け入れるまちが生き残る。その窓口に小さな宿がある」

こんな思いから開業ノウハウをまとめた。ゲストハウス情報サイト「FootPrints」代表の前田有佳利さんとの共著で、コロナ禍を乗り越えたほかの宿の例なども紹介する。

ゲストハウスは、世界的な相場が1泊30~50ドル程度と低価格の宿。日本ではここ10年で急増した。外国人バックパッカー向けの相部屋が一般的だったこともあり、コロナ禍で廃業が相次ぐ一方、個室を設けるなどして生き残りを図る宿もある。

共用のリビングやトイレ・シャワーなど旅人同士の交流が生まれる仕掛けがあるのも特徴だ。自身が営む宿では、宿泊客と住民との出会いを創出するため、近隣の飲食店や商店などとの関係づくりに努めている。

「銭湯に行ったりお土産を買ったり。宿の中だけでなく地域の中でサービスが完結する」ことで、まち全体を気に入って定宿にする客が少なくないという。

地域体験が観光資源だ。隣近所も知らずに営業すると、宿泊客が商店街を利用したときに「対応が悪い」という印象になりかねない。開業前から住み、行事の手伝いや掃除をした。

そこは住民が長い年月をかけて築いた人間関係に基づく縦社会。「組織のトップに話を通せばいいというわけではない。何度も失敗して怒られては呼び出され」ているうちに、支援してくれる人々が現れた。

「土地と建物だけではできない」。そんなノウハウが詰まった一冊だ。(学芸出版社・2530円)

寺田理恵

   ◇

【プロフィル】渡邊崇志

わたなべ・たかゆき 株式会社宿場JAPAN代表。昭和55年、東京都生まれ。明治大卒。複数のホテル勤務を経て平成21年にゲストハウスを開業。

産経新聞
2022年5月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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