<東北の本棚>城下町潤した遺構解説
[レビュアー] 河北新報
「四ツ谷用水」は、仙台藩祖伊達政宗が江戸初期、現在の仙台市内に築造を命じ、城下町を潤した水路だ。2016年、土木学会の選奨土木遺産に認定された。本書は、遺産認定を目指し、遺構を調査した市民団体「仙台・水の文化史研究会」が自費出版した。古地図や都市計画図、地質調査の結果を基に、水路の高い価値を強調する。
具体的な数値を示しながら議論を展開するのが特徴だ。例えば、広瀬川からの取水口を設けた青葉区の郷六地区から八幡の箱清水という地点までは、水路の底の高さがそれぞれ標高62・49メートル、60・85メートルで、距離が2575メートルあったと記す。100メートル進むと6センチ下がる勾配だとし、水路の建設者たちが高度な土木技術を持っていたと結論付けている。
力点を置いているのが、仙台の地下にダム機能があったとする研究会の調査結果。城下町の地下には、水を通しやすい「砂れき層」とその下に不透水層があり、活断層の活動により地盤が隆起した結果、地下にダム構造を持ったくぼ地ができた。用水が運ぶ水や雨水がたまり、湧水や井戸水に恵まれた城下町の環境が形成されたという。
明治以降、地下水路化や移設によって四ツ谷用水からの水の供給が途絶え、アスファルト舗装が雨水の浸透を妨げた結果、多くの湧水や井戸水が枯れた。研究会は、地下の帯水層構造を活用した豊かな水環境の整備は、ヒートアイランドの抑制や防災に役立つと、用水の復活を訴える。
用水が土木遺産に認定されるまでの経緯にも触れている。認定の申請をするのに同意が必要な管理者が、当時は宮城県か仙台市かはっきりしなかった。管理者を確定させるために関係者が奔走する描写が興味深い。(柏)
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