【児童書】『荒野にヒバリをさがして』アンソニー・マゴーワン作、野口絵美訳

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荒野にヒバリをさがして

『荒野にヒバリをさがして』

著者
McGowan, Anthony, 1965-野口, 絵美, 1956-
出版社
徳間書店
ISBN
9784198654306
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

【児童書】『荒野にヒバリをさがして』アンソニー・マゴーワン作、野口絵美訳

[レビュアー] 産経新聞社

■希望探し歩み続ける

イギリスの優れた児童文学に贈られるカーネギー賞の受賞作。自然の豊かなヨーク地方を舞台に、家族の絆を描いた感動作だ。

主人公の男子中学生、ニッキーと兄のケニーは犬のティナを連れ、ヒバリを見るためにハイキングに出かける。ところが、突然の春の嵐に巻き込まれ、荒野をさまようことに。

季節外れの雪で道を見失い、歩き続ける2人。ニッキーは、帰り道を探しながら家族の歴史を思い出していく。特別支援学校に通うケニー、かつてお酒におぼれていた父親、家族を捨てて出ていった母親…。

家族のつらい記憶が明らかになる中、過去を乗り越えた兄弟が遭難中もお互いを思いやり、希望を探して歩み続ける姿は感動的だ。

ニッキーは常にケニーが混乱しないよう優しく語り掛ける。後半、危険な状況に陥ったニッキーに対し、ケニーも弟の身を案じて行動する。終盤でニッキーが語ったティナにまつわる物語が、エピローグで生きる。2人と1匹の冒険小説としても、先が気になるおもしろさだ。(徳間書店・1540円)

油原聡子

産経新聞
2022年6月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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