『仰天・俳句噺』
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『仰天・俳句噺』夢枕獏著
[レビュアー] 産経新聞社
伝奇や格闘、山岳など多彩なジャンルに挑戦してきた人気作家が、闘病と俳句を主軸に据えたエッセー。著者がひそかに詠んだ俳句も盛り込まれている。
著者は令和3年3月に血液のがんである悪性リンパ腫と診断され、ほぼ全ての仕事を休止せざるを得なかったが、病床でも俳句を詠み続けたという。入院中に手掛けた俳句群のタイトルは「黒翁(くろおきな)の窓」。「死」「点滴」「蛇」などの鮮烈な言葉がちりばめられている。
窮地に立たされても、その状況下で遊ぼうという心意気が伝わってくる。人生の残り時間を意識した文筆家の渾身(こんしん)の作だ。(文芸春秋・1760円)