「詰めが甘い人」に抜けている考え方 専門家が指南する情報を正しく理解するコツ

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詰めが甘い人に足りてないこととは?(写真はイメージ)

インターネットやSNSで情報が過多に溢れる現代においては、それらの真偽を見定め、正しく理解することが求められるようになりました。

情報を「理解する」とは、具体的にはどういった状態を指すのでしょうか? また、詰めが甘い、間違いが多い、フェイクニュースを信じてしまったなどの悩みを抱える人も多いのではないでしょうか?

本記事では『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』を上梓した伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗さんに、情報を正しく理解する思考のプロセスについてお聞きしました。

※本記事は『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』の一部を抜粋・再編集したものです。

不確かな情報に惑わされないために

変化のスピードが速い時代です。日々、大量の情報が飛び交う世の中です。そうした中、わたしたちの理解だけが「停止」していていいはずがありません。ここで武器となるのが「クリティカル思考」です。

クリティカル思考とは、常識や主観、感情などに流されず、情報を見定めようとする思考プロセスのこと。「批判的思考」と呼ばれることもあります。平たく言えば「この情報は本当に正しいのか?」と考えることです。常識や前提をあえて疑ったり、情報を分析的に読み解いたり、自分の思考のバイアス(偏り/思い込み)に気づいたりすることで、誤った理解やズレた理解を防ぐことができます。

たとえば、ニュース記事の中には、特定の人物をヒール(悪役)に仕立てようという意図が透けて見えるものがあります。論理を飛躍させる。重要な情報をわざと省く。ミスリード(誤読)を誘う。意見を事実のように語る。あいまいな言葉を使う――などなど。クリティカル思考が働いていなければ、それらの罠にはまりかねません。

特定の情報や考えにとらわれすぎることなく、複数のソース(情報源)にあたってみることもクリティカルな行動と言えます。もちろん、猜疑心が強すぎてはいけませんが、「この情報は正しいのだろうか?」という意識を持つことは、情報に翻弄されないためのリスク回避策でもあるのです。

詰めが甘い人に足りていないこと

また、近年、教育現場で注目を集めているアクティブ・ラーニングもクリティカルなアプローチといえます。アクティブ・ラーニングとは「能動学習」や「探求学習」と呼ばれ、先生(講師)の話を一方的にインプットするだけでなく、書く・話す・発表するなどのアウトプットを取り入れることによって授業(講義)の効果が高まる、というものです。

たとえば、あなたが「SDGs(Sustainable Development Goals /持続可能な開発目標)」について学んだとき、その理解を深めるためには、学んだことを書く・話す・発表することが効果的です。なぜなら、自分が正しく理解していなければ、正しく人に伝えることはできないからです。人に伝えることを前提とすることで「正しく、深く理解しよう」という気持ちが芽生えるのです。

アウトプットまでの道すがら、おそらく自分の理解が足りていないことに気づく瞬間がくるはずです。このときがチャンスです。自分が「何を理解していないのか」がわかれば、調べるなどして理解を深めていくことができるからです。また、アウトプット中に、周囲(相手)からいろいろな質問が飛んでくることもあるでしょう。その際、答えに詰まったり、うまく答えられなかったりしたなら、それは、自分の理解が足りていなかったということです。その「不足」をていねいに埋めていくことで、理解を深めていくことができます。

アクティブに働きかける理解の中で最も効果が大きいのは「教える」です。あなたが先生となって、それを知らない人に教えるのです。「教える=ただ伝える」ではありません。ゴールは「相手が正しく理解する」こと。教えることを前提とするだけで、緊張感が生まれ、インプット時の意欲と集中力も高まります。

たとえば、あなたが、あるテーマの文章を読んでいるときであれば、そのテーマについて教える相手からどんな質問を受けるだろうか? 質問を受けたら、どう答えればいいか?――とシミュレーションしながら読み進めることでインプット効果を高めることができます。あなたが学びと理解のスピードを高めたいなら、「1週間後に、○○について後輩に教える」あるいは、「1ヶ月後に、○○についてのシェア会や勉強会を開く」など、教える予定をスケジュールに組み込んでみましょう。

ワンランク上の自分を目指すために必要なこと

理解力に自信がある人も、それが「理解したつもり」ではないかの注意が必要です。

たとえば、駅から目的地のビルまで行く間で、あなたは迷ってしまいました。まわりに人はいません。おそらくあなたは、スマートフォンを使って地図アプリを見るでしょう。現在地と目的地を確かめるためです。

地図を見ながら進むことで、あなたはロスなく目的地へ到着することができます。自分の視点を持ち上げて俯瞰する力を「メタ認知」と言います。メタ認知とは、狭義には、自分の思考や行動を客観視する能力のことですが、広義には、自分を含むさまざまな対象を広い視野で見渡す力のこと。

あなたの言動を監視するコントロールセンターのようなものです。囲碁や将棋で言うところの「大局観」も「鳥の目」と言えます。「大局観」とは、広い視野で勝負全体を見て、形成の有利・不利や、最善の打ち手を見極める力のこと。その力が高いほど、勝負に勝つ確率が高まるのです。

メタ認知を高めることは、「鳥の目」を手に入れることにほかなりません。空を飛ぶ鳥はいつでも街全体を見渡しています。どこに何があるのか。A地点とB地点の距離はどれくらいか。地上では手に入れがたい情報を把握しています。

一方、人間の現実は「虫の目」です。その視線は地上に張りついています。迷ったら最後、現在地や目的地を見失ってしまうこともあります。「虫の目」のわたしたちが「鳥の目」を手にするためには、以下の2ステップを踏む必要があります。

1.「鳥の目」の世界があることを意識する
2. 想像力を駆使して「鳥の目」になる

想像でいいので、目と心のドローンを上空に飛ばしてみるのです。上空から見たら、この状況はどう見えるだろうか? 相手からはどう見えるだろうか? ゴール地点からはどう見えるだろうか? 広い視野で世界を見渡すことによって、それぞれの位置関係や、その関係性、本来の目的、真意などが、初めてわかることもあります。

もっと言えば、「『よくわからない』という自分のことがわかっていること」もメタ認知の働きです。メタ認知力が高まると「本当にこの理解でいいのか?」「何かおかしいぞ」「もっと深い意味がありそうだ」――のように気づきやすくなります。

とはいえ、なかなか視点を自分から離せない、という人もいるでしょう。そういう人は、第三者からフィードバックを受けることをおすすめします。フィードバックとは「相手の言動に対して評価や改善点を伝えること」です。

たとえば、営業先で商品説明をした際、自分では「よくできた」と思ったとしましょう。しかし、同席していた同僚から「○○の説明がわかりにくかった」とフィードバックを受けることで、自分の「よくできた」という認識(理解)が誤りだったことに気づくことができます。すると、次回以降の軌道修正が可能となります。このように第三者の目を、自分の「鳥の目」として活用するのです。

「理解したつもり」と同じように「自分はメタ認知力が高いはず(=全体やまわりがよく見えている)」と思っている人は、それ以上に視座が高まっていきません。メタ認知力を高めるうえでは、「自分はメタ認知力が低いのではないか?」と疑っているくらいがちょうどいいサジ加減です。

山口拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)ほか25冊以上。文章術、伝え方のノウハウ書籍が多いが、本書で伝えている「情報を的確に理解するための技術」など、本質をとらえたノウハウも高く評価されている。

山口拓朗(伝える力【話す・書く】研究所所長) 協力:日本実業出版社

日本実業出版社
2022年6月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本実業出版社

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