【話題の本】『編集者ディドロ 仲間と歩く『百科全書』の森』鷲見洋一著

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■硬派な大著、3カ月で増刷

約900ページ、厚さ6センチ。造本技術の限界に挑戦したかのような分厚さがまず目をひく。硬派な大著ながら、発売3カ月で増刷が決まった。

18世紀フランスの啓蒙(けいもう)思想家で、現代の百科事典の直接の祖先にあたる『百科全書』の編集長を務めたディドロ。その研究に数十年を費やした仏文学者が、『百科全書』という壮大な企画が生まれるに至った時代背景や出版に絡む人的ネットワーク、さらに収録された膨大な図版のイメージ解読まで、縦横に論じる。

と書くと堅苦しいが、全編「です、ます」調で平易に語られており、折々に著者の率直な感想も交えつつ、さながら名調子の講義録といった趣。特段の予備知識がなくても、面白く読み進められる。

「まるっとした物体感と、一冊で読み通してもらうことを重視した」と話すのは、担当した平凡社の日下部行洋さん。分冊にすることは最初から考えなかったという。本としての強度確保のため、見返しを厚めにしてかがり糸を通し、軽めの紙を使うなど、百科事典の老舗としての造本ノウハウも生かされている。

ディドロという巨大な知性を扱うのに、この形態は必然性ある選択だったのが理解できる。(平凡社・5280円)

磨井慎吾

産経新聞
2022年7月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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