SNSが生活に深く入り込み、スマホを開けば周りの人の幸せな姿がすぐ目に入ってくる現代。
誰しも、幸せそうに見える周りの人と、うまくいっていない自分とを比べ、いやになってしまった経験があるのではないでしょうか。
『迷ったら、自分を好きでいられるほうを選べばいい』(あさ出版)の著者で、経済産業省や大手企業の人材育成担当を務める傍ら、コーチングスクールを運営する馬場啓介氏は、同書の中で「幸せそうな人」について以下のように述べています。
「何もかも順調そうで、幸せそうだと妬ましくなってしまう。でも、「そう」なんです。幸せ「そう」、順調「そう」、落ち込んだりなんてしなさ「そう」と、あくまで推測の域を出ません」(18ページより)
つまり、幸せそうな人は幸せ「そう」に見えるだけで、実際はさまざまな荷物を背負いながら、平然と見せて生きているということです。
「幸せそうに見える人でも、心の中には色々な葛藤がある」とわかっていると、幸せそうな人が見せている姿は、その人のほんの一部なんだと思うことができ、無駄に他人に嫉妬することがなくなります。
今回は、「つい人と比べて落ち込んでしまう」「この世は不平等だと思ってしまう」「もっと影響力が持てたらいいのに」といった悩みから解放される3つのメッセージを『迷ったら、自分を好きでいられるほうを選べばいい』より抜粋、再構成してご紹介します。
お悩み1.つい人と比べて落ち込んでしまう
「人と比べるのはよくない」ということは分かっていても、ついつい比べてしまうものです。
しかし、果たして目に見えない幸せや優しさ、愛情は比べられるものでしょうか?
馬場氏は「ときには人と比較することも仕方ない」というスタンスを取りつつも、「人と比較できないものまで比較してしまうこと」の残念さを語ります。
「身長や年収や出世の早さは簡単に比べられても、目に見えない幸せや優しさ、愛情は比べようがありません。比較できるものを比較して、それで自分がやる気になったり行動が加速するなら、それはそれでいい。しかし、これだけは覚えておきましょう。本当に大切なものは比較できないのです」(32・33ページより)
「つい人と比べてしまうのは、比較できるものばかり見ているから」です。
比較できるものばかりにとらわれず、目に見えない「本当に大切なもの」にも目を向けてみるのが、他人と比べて落ち込むことを減らすヒントだと馬場氏は教えてくれます。
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お悩み2.この世は不平等だと思ってしまう
家がお金持ちの人や容姿に恵まれている人を見ると、その人たちの幸せが羨ましくなり、世の中は不平等だなあ、と悲観的になってしまうことがあります。
そんなとき、人生は不平等なことばかりではないと思い直すヒントがあります。
そのメッセージとは、「一番大切なものは、不思議と平等にできている」というものです。
具体的には、命である時間も、幸せを感じられる回数も、人を愛する心も、信じる心も、自由も、すべて平等に与えられているということです。
「恵まれた環境で生まれた人が、貧しい環境で生まれた人よりも幸福度が高いわけではありません。華やかに見える有名人の幸福度が高いわけでもありません。誰もがそれぞれの「不安」を抱き、必死に生きています。目に見える表面的なものは不平等であっても、もっと大切な、目に見えないものは平等に与えられていることに気づけると、「見える世界」が変わってくるものです」(70ページより)
また、他にもわたしたちに平等に与えられているものとして、馬場氏が挙げているのが「自由」。
自分ではどうにもできない事柄があっても、それに対しどんな気持ちを抱くかは自由であり、「出来事は『捉え方』次第でいくらでも変えることができる」と言います。
こうした捉え方をすることで、世の中の不平等さに落胆することが減ることでしょう。
お悩み3.もっと影響力が持てたらいいのに
SNSを見ていて、多くのフォロワーを抱えていて影響力のあるインフルエンサーや人気者に憧れたことはありませんか?
わたしたちがSNSなどで広い「影響力」を求める背景には、「不安」があると馬場氏はいいます。
「より多くの人とつながり、反応してくれると安心できるので、多くの中毒者がいるわけです。そして、そんな大きな安心感を手にした影響力がある人に憧れ、自分も目指そうとするのです」(162ページより)
人は「つながり」を求める生きものであり、「つながり」こそが不安を和らげてくれるものです。
それゆえ不安を払拭するために、広い「影響力」を持って「つながり」を感じたいと願うのだそうです。
では、影響力を手にすれば不安は完全に解消されるのか? と思ってしまいますが、実際はそうではなく、「人気者でも、影響力を維持する大変さがある」と馬場氏は指摘します。
「ただ、運よくそんな影響力が持てたとしても、個人の影響力には限界があり、いつか必ず衰退していきます。その時に、自分の存在価値が下がった、成長が止まったと自分で思い、また、人から思われることほどつらいこともありません」(162ページより)
さらに馬場氏は「そもそも人の本質的な価値も魅力も、SNSの影響力などでは計れません」と主張します。
そして求める影響力が得られずに悩んでいる人に対し、「一度足元を見て、身近な人により良い影響を与えられるよう、努力することからはじめてみること」を勧めています。
その理由を馬場氏はは以下のように語っています。
「身近な人に売れないものは、全国どこに行っても売れません。広い影響力がないから売れないというのは言い訳です」(162ページより)
自分の価値や魅力を高めたいという想いは、誰しもが持っているものです。
影響力に囚われて無駄に苦しむことなく、その想いとうまくつきあっていくために、自分の周りをご機嫌にすることから始めていくのが不安から開放される一つの方法なのかもしれません。
今回紹介した悩みは、自分が思っているより難しい問題です。深く落ち込んでいるときには、ひとりでは答えを導き出すことができないこともあります。そうした悩みに独自の解釈でアプローチする馬場氏のメッセージは、自分のあり方について悩んだり、迷ったりしたとき、心の重りを軽くする助けとなってくれるはずです。
馬場啓介
トラストコーチングスクール代表/マザーズコーチングスクール代表。1980年、鹿児島生まれ。法政大学法学部卒。米国留学後、外資系人材サービス会社を経て株式会社コーチ・エィ入社。トップトレーナーとして国際コーチ連盟の試験官も務める。2009年トラストコーチングを設立。経済産業省や大手企業の人材育成担当を務める傍ら、「誰もがコミュニケーションを学ぶ文化を創る」をミッションに、国内外に累計約5000名の認定コーチを育成している。また、コーチングを取り入れたコミュニケーションプログラムを導入しての幼児教育も手がけ、各地の教育委員会の後援を受け、「いじめ」や「孤独」などをテーマにした講演などで、コミュニケーションの重要性を伝える活動に力を入れている。著書に『「キングダム」で学ぶ最強のコミュニケーション力』(集英社インターナショナル)『鏡の中のぼく』(キングベアー出版)など。
馬場啓介(ビジネスコーチ・作家) 協力:あさ出版
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