『東京の古墳を探る』松崎元樹著
[レビュアー] 産経新聞社
ユネスコ世界文化遺産「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪)や卑弥呼の墓という説もある箸墓古墳(奈良)。古墳といえば、近畿の巨大前方後円墳が浮かぶが、日本各地に多様な形の古墳がある。
古墳は東京にもある。本書では都心部と多摩地域の古墳について、研究史のほか構造や出土品などを取り上げ、どのような人々が造営したかを推察している。多摩川流域では古墳時代後期から終末期以降、台地の斜面を掘った横穴墓が数多く造られた。奈良時代には大国・武蔵国の国府が置かれたこの地域の成り立ちを、古墳時代にさかのぼって考察しており、興味深い。(吉川弘文館・1980円)