【話題の本】『破れ星、流れた』倉本聰著

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■ドラマのような脚本家の自伝

数々の名ドラマを送り出してきた脚本家が87歳で自身の歩みと、尊敬する父の姿を書き残した初の自伝。

著者の父はクリスチャンで、正義感にあふれ、スポーツをするようにケンカをした。経営者として仕事に打ち込み、俳句を愛し、家族を守った。一方、幼少期の著者には臆病で卑怯(ひきょう)な一面もあったが、父は息子を愛し、叱咤(しった)し、育んだ。やがて著者は「漢の字のおとこ」と評された父同様の硬派な青年となっていく。

父の伝説的なエピソードとともに著者の生々しい戦争体験もつづられる。その戦争ですべてを失いながら泣き言は言わず、矜持(きょうじ)を保った父と17歳で永訣(えいけつ)後、浪人、東大、就職したニッポン放送時代までを書いた。

6月に刊行。「波瀾(はらん)万丈な小説のよう」との反響もあるが、「すべて実話。お父さまも倉本さんもドラマを引き寄せる何かがありますね」と編集者の菊地朱雅子さん。さらに、「この親子関係や戦争の話は、きちんと伝えたい」と力を込めた。

ほろ苦く、切なく、かつ希望は失わず、エネルギッシュな道程は読み応えがあり、今こそ読んでほしいと思える一冊。「続きが読みたい」の声も多く、サンケイスポーツで続編が連載中だ。(幻冬舎・1980円)

三保谷浩輝

産経新聞
2022年8月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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