人間関係が自然とスムーズに。「非言語メッセージ」を解読する眼を培うとわかること

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

人間関係が自然とスムーズに。「非言語メッセージ」を解読する眼を培うとわかること

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ビジネスエリートが身につけたい 教養としてのダンディズム』(御手洗昭治 著、ぱる出版)の著者によれば、近年は「人を引きつける振る舞い方や作法」に関心を持つ人々が増えているのだそうです。

◆大事なビジネス・シーンや食事会などで、恥をかかずにどう対応すればよいのか?

◆異文化の人びととの交流の機会が多くなった現代、彼らとの交流や商談の場面などで、自信を持って振る舞うにはどうすればよいのか?

(「はじめに」より)

などなど。そこで本書では、大人として身につけておきたい流儀とたしなみにフォーカスしているわけです。

とくに重要なのは、時代との関係性。異文化に生きる人々との交流が増えた現代社会においては、マナーや社交術にもグローバルな視点からの相互理解が求められているというのです。

一流のビジネスパーソンたるもの、「異なる文化の人たちと、いかにすれば、うまく交際することができるのか?」また「どうすれば、お互いにメリットのある商談をまとめられることができるのか?」などの流儀や方法を積極的に身につけていく必要がある。(「はじめに」より)

こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第3章「ダンディズムを醸す非言語メッセージの察し方・伝え方」内の「非言語メッセージを解読する眼を培う」に注目して見たいと思います。

無意識下のボディ・ランゲージ(身体言語)

これからの時代に求められるのは、目では観察できない「暗黙のルール」として受け入れられており、普段は意識されていない「非言語メッセージ」の解読であると著者は主張しています。したがって、人を見る眼を養って相手の心理をつかんだり、相手の振る舞いを分析し、他人の気持ちを知ることが必要なのだと。

さらに、相手の気持ちを知るためには、まず自分を知ることが不可欠。なぜならそうすることで、相手の隠れた欲求や深層心理を読み取れるようになるからです。そしてそれは、周囲との人間関係をスムーズにし、自分の人生をより豊かなものにしてくれるといいます。

欧米人と比較した場合、日本人の対人コミュニケーションには、身体表現が少ないと指摘される。彼らは会話をしている最中も口八丁、手八丁ではないが、顔や手を中心に表情豊かに話す。また、相手の身振りにも敏感に反応しながら、喜怒哀楽を自然体で会話をしているが、自分達はそのことに気づいていない。(76〜77ページより)

このことに関しては、社会言語学者のエドワード・サピアが興味深いコメントを残しているのだそうです。

「われわれは、あたかも精妙な秘密の暗号に従うかのごとく、さまざまな身振りにきわめて敏感に反応する。それについては、どこにも書かれておらず、誰一人知る者もいない非言語の暗号だが、すべての人はそれを理解できる」と。(76ページより)

相手は初対面でこちらの教養・器を判断する

英語圏には、「第一印象がすべてで、第二印象はない」(There is no second chance to make a first impression.)という格言があるそうです。

つまり、見た目の清潔感も含む外観、人となりや第一印象が重要だということ。

初対面の際、世界のビジネスパーソンや女性秘書の中には相手を数秒で観察し、その人の収入や教養・趣味、職業などを99パーセントの確率で判断できる人が存在する。

その人は相手を観察し、一気に結論に達する脳の働きである「適応性無意識レベル」が高く、人を瞬時に判断できる行動科学者のような見識を持っている。

読者には本書を通して行動科学者のごとく、自己の無意識をきたえ、たくみに操り、最初の数秒で判断する非言語メッセージ解読力を高めて頂きたい。(77〜78ページより)

なお、著者によれば「できる人が実践している着こなしのベース」があるのだとか。たとえば奇抜な格好をする人は、自分が個性的であることを服装で表現し、仕事もできることを伝えようと試みているというのです。

ただし、アメリカの社会・文化などでそれは逆効果で、個性的なスーツは仕事の邪魔になると見なされているようです。いいかえれば、スーツに個性は不要という「暗黙の文化価値」に基づくルールが存在するということ。

つまり印象操作においての成功の鍵は、自分が相手に与えるイメージによるインパクトを、“そこで得たい狙い”に合わせること。そのためには、自分の置かれている状況と相手の自負心に細心の注意を払う必要があるわけです。(77ページより)

言動の「裏メッセージ」を知ることができる

行動科学者はヒューマン・ウォッチャーであり、人々の仕草、動作、コミュニケーション行動のパターンを野外観察するのだと著者は述べています。

ここでいうヒューマン・ウォッチャーにとっての野外とは、電車やバスの停留所、スーパーマーケット、街角、競技場など多種多様。人がなんらかのアクションを起こしたり、行動したり、コミュニケーションをしているところであれば、すべてが観察と学びの機会になるということです。

つまり、人間の特定の行動パターンや非言語のメッセージを読み取ることができれば、人と出会い、交際する時に、相手の仕草や動作、振る舞いの裏に隠された意味を知ることができる

人間は動物であるが、サルをはじめ他の動物が行わない交渉(取引き)という唯一の行動を、ノン・バーバルなジェスチャーやメッセージを使用したりして行うことができる。(79ページより)

重要なのは、非言語のノン・バーバルなメッセージの多くは、自分では気づいていない意識下でやりとりされているということ。そういった“自分では気づかないメッセージ”は、潜在意識に作用したり影響されたりしながら、私たちの考え方や感じ方、行動パターンを大きく作用するというのです。

しかし当の本人は、なぜそうした反応が引き起こされているのか気づいていないケースが多いのだといいます。それは、コミュニケーションが理性よりも感性によって大きく左右されるものだからだそうです。(79ページより)

頭ごなしな論調ではなく、欧米におけるマナーの成り立ちや変遷にも触れているところが本書の魅力。そのため、ビジネスパーソンに求められる流儀を無理なく学べるわけです。取引先などとの関係性をより深めるためにも、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2022年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク