2つだけ変えてみて。精神科医が明かす「相手に伝わる」話し方改善テクニック

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2つだけ変えてみて。精神科医が明かす「相手に伝わる」話し方改善テクニック

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

効果的な聞き方や話し方を身につけるのは、なかなか難しいもの。事実、「うまく聞けない」「伝わるように話せない」というような悩みは後を絶ちません。そこで参考にしたいのが、『精神科医がやっている聞き方・話し方』(益田裕介 著、フォレスト出版)。

精神科専門医・指導医である著者が、精神医学をベースに、ビジネスでも使える会話のテクニックをまとめたものです。

精神科の臨床は、さまざまな人と心を通わせることに本質があります。

精神科医は、自分の家族とさえあまりコミュニケーションが取れないという人たちとコミュニケーションを取らなければいけないのですが、そのときにプロとしての技術を使っています。本書ではこの技術を公開しました。(「はじめに」より)

とはいえ難解な内容ではなく、紹介されている技術(会話術)は、ビジネスや日常生活にも役立つものばかり。とくにビジネスの現場では高いコミュニケーションスキルが求められますが、ここで明かされている技術を意識的に使えるようになれば、他の人よりも優位に立てるはずだと著者は太鼓判を押しています。

これは、野球のピッチャーが球種が増えることで、ストレートが活きるようになるのにも似ています。選択肢が増えることで、視野が広がり、今まで見えてこなかった手法も使いこなせるようになるでしょう。(「はじめに」より)

きょうは第4章「精神科医が実践する、相手を導くテクニック」のなかから、2つのポイントを抜き出してみたいと思います。

専門用語、難しいことばは決して使わない

ご存知のとおり、ビジネスの現場ではさまざまな専門用語が飛び交っています。たとえば「アサイン」「ローンチ」「エビデンス」「クリティカル」「コミット」などなど。誰しも一度や二度は、こうしたことばを耳にし(場合によっては違和感を覚え)たことがあるのではないでしょうか。

それは著者が身を置く精神医学の世界でも同じだといいますが、とはいえ患者さんと接する際、専門用語はできる限り使わないようにしているのだそうです。なぜなら専門用語を使うと、患者さんに理解されず、伝えたいことが伝わらないから。

「PTSD」のように昨今はよく知られている用語でさえ、もっとわかりやすく「大きな苦悩を与えるような出来事などを体験して生じる心的な反応です」というように噛み砕いて伝えているというのです。

そして当然ながらそれは、ビジネスの世界にもいえること。相手が一般人やほかの業界の人だった場合、専門用語は絶対に使うべきではないということです。いうまでもなく、相手から理解されないだけでなく、不快な気持ちを抱かせてしまう可能性もあるから。

たとえばここでは、「IT業界で働く人と、クライアントである老舗の魚屋さんとの会話を例に挙げています。

お客様:新しい干物の商品が完成したので、今度、ECサイトで広告を打ちたいんですよ。

IT業者:なるほど。その戦略には、全面的にコミットさせていただきます。

(162ページより)

「コミット」は英語の「コミットメント」の略語で、「責任を持つ」「真剣に向き合う」といった意味。つまり「結果を出すために全力でがんばります」と宣言しているわけですが、相手には伝わらない可能性大。それどころか、「なにを偉そうなことをいってるんだ」と不快感を持たれるかもしれません。

もしかしたら専門用語を多用する人は、「デキる人」を演じているつもりなのかもしれません。が、往々にして相手からは「この人、自信がないのだろうな」と思われてしまうものだと著者は指摘しています。結果的に、「本当は弱い(実力がない)から、ことばで武装している」と感じさせてしまうわけです。

では、どうすればいいのか? 上記の会話の場合なら、次のように普通のことばに置き換えるといいそうです。

お客様:新しい干物の商品が完成したので、今度、ECサイトで広告を打ちたいんですよ。

IT業者:なるほど。その戦略には、全面的に強力させていただきます!

(163ページより)

このように普通のことばで話した方が、相手の心にスッと入るため好感を得られやすいということです。(160ページより)

本題に入る前に「雑談」をする

会話はあらかじめ定めたストーリーに沿って進めていくものですが、相手との信頼関係が希薄だと、なかなかスムーズには進まないもの。

そこで、少しでも相手との関係性を良好にしておく必要があります。そんなときに力を発揮するのが「雑談」。すでに活用している人もいらっしゃるでしょうが、本題に入る前に、ゆるいコミュニケーションをとるわけです。

なお、取り上げる話題は基本的になんでもOK。ゆるいコミュニケーションが目的なのですから、以下の取引先との雑談のように、会話のキャッチボールができる話題を選べばいいだけなのです。

あなた:御社の近くのサクラが満開でしたね。

相手:そうなんですよ。毎年の楽しみなんです。

あなた:昨日、山梨に行ったら、桃とサクラの花のコラボレーションが見事でしたよ。

相手:へぇ〜、桃の花もこの時期なんですね。

(192ページより)

季節外れな例ではありますが、このように、ひとつの話題を思いついたら、その話題に関連するエピソードをいくつか用意し、コミュニケーションをとっていけばいいということ。そして、雑談を通じて相手がリラックスしてきたころ、本題に入っていくのです。

ただしゴシップや下ネタ、宗教、政治の話題は、相手に不快感を与えてしまう可能性があるので避けたいところです。(190ページより)

たとえばこのように、紹介されているのはすぐに取り入れられそうなことばかり。活用してみれば、コミュニケーションでの悩みを解決することができるかもしれません。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2022年9月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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