「バズった」人々のその後

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人生はそれでも続く

『人生はそれでも続く』

著者
読売新聞社会部「あれから」取材班 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784106109638
発売日
2022/08/18
価格
902円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「バズった」人々のその後

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 人々の関心とは移ろいやすいものだ。悲しい事件や驚くべきニュースは毎日のように起こり、ワイドショーやSNSで取り沙汰されるが、ひと月もすれば忘れられてゆく。だがその主役となった人物たちは、それからも重い荷物を背負ったまま、長い人生を歩んでゆかねばならない。

『人生はそれでも続く』は、読売新聞社会部「あれから」取材班が、話題となった人物二二名のその後を追った一冊だ。登場する人物の多くは、事故や事件に巻き込まれるなど、本人が望まぬ、あるいは思いもよらぬ形でスポットライトを浴びた人々だ。

 甲子園で松井秀喜を五連続敬遠した投手、金八先生で「腐ったミカン」の加藤優役を演じた子役俳優、鈴木宗男議員の秘書を務めたアフリカ出身男性など、経験を生かしつつ意外な人生を歩んでいる者も多い。だが時を経てなお、癒えることのない傷を抱えながら生き続けている者もいる。特に、熊谷六人殺害事件で妻と二人の娘を失った男性のケースは、同様に家族を持つ者として、読んでいてあまりに胸が痛い。

 読み終えて、「そういえばあの人は今どうしているのだろう」と、取り上げてほしい人の顔がいくつも浮かぶ。一方で、スマホ一つで万人が瞬時に世界へ情報を届けられる現在は、誰もが突如として「バズり」、こうした立場に立たされうる時代でもある。予告もなく訪れる人生の転換点に、備えておかねばという気にさせられる。

新潮社 週刊新潮
2022年9月29日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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