不安、不満に寄り添う「純文学」が静かに広がる[文芸書ベストセラー]

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 9月27日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『ハヤブサ消防団』が獲得した。
 第2位は『「十二国記」30周年記念ガイドブック』。第3位は『異世界ゆるり紀行13 子育てしながら冒険者します』となった。

 4位以下で注目は7位にランクインした『おいしいごはんが食べられますように』。7月20日に発表された第167回芥川賞の受賞作。ある職場の人間関係を食を通して描いた作品。穏やかなタイトルと裏腹に不穏な空気に満ちた人間関係を描く。

 書評家、ライターの倉本さおりさんは、同作を含む純文学全体の熱が《いま、静かに広がりつつある》とし、《「他人事のように消費できる娯楽ではなく、自分のなかにある、未だ名付けられていない不安や不満に寄り添ってくれるもの。いまの純文学作品はそんな姿をしているように思います」》と語る書店スタッフの声を紹介。また読者からは《今回の芥川賞をめぐって聞こえてきたのは、「自分事として捉えられる」という声》が届くと紹介し、《職場に充満する「割りに合わない」という感情を緻密な物語に昇華させた『おいしいごはん~』をはじめ、候補作はいずれも社会の綻びや偏りから生まれるものを丁寧に掬いとっている点で共通している。》と分析している。

1位『ハヤブサ消防団』池井戸潤[著](集英社)

ミステリ作家vs連続放火犯 のどかな集落を揺るがす闘い!東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだミステリ作家の三馬太郎。地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、消防団に勧誘される。迷った末に入団を決意した太郎だったが、やがてのどかな集落でひそかに進行していた事件の存在を知る───。連続放火事件に隠された真実とは?地方の小さな町を舞台にした、池井戸作品初の“田園”小説として、「小説すばる」連載中から話題を呼んだ珠玉のミステリ。(集英社ウェブサイトより)

2位『「十二国記」30周年記念ガイドブック』新潮社[編](新潮社)

1991年に誕生した大人気シリーズ「十二国記」を様々な視点から辿る、初のガイドブック。30周年を祝したアートギャラリーでは、萩尾望都・藤崎竜・芥見下々・羽海野チカ・清原紘・いとうのいぢ・遠田志帆・THORES柴本・千景の超豪華9名による描き下ろしイラストを掲載。巻末には”幻の短編”「漂舶 十二国記外伝」を特別収録。(新潮社ウェブサイトより)

3位『異世界ゆるり紀行13 子育てしながら冒険者します』水無月静琉[著](アルファポリス)

風の神シルフィリールのミスによって命を落とし、異世界に転生したタクミ。森の中で双子のアレンとエレナを保護した彼は、冒険者として生活を始めた。お世話になっている貴族の結婚式のためにガディア国の王都に戻ってきたタクミ達。プレゼントを用意しにいろいろなお店を回ったり、依頼のために入った森でペガサスに出会ったりと、久々の王都を楽しんでいた。そうして無事に結婚式を迎えたのだが、その最中、思いもよらなかったハプニングが起きて――(アルファポリスウェブサイトより)

4位『invert II 覗き窓の死角』相沢沙呼[著](講談社)

5位『その本は』又吉直樹[著]ヨシタケシンスケ[著](ポプラ社)

6位『アラフォー賢者の異世界生活日記 17』寿安清[著](KADOKAWA)

7位『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子[著](講談社)

8位『いずれ最強の錬金術師?13』小狐丸[著](アルファポリス)

9位『#真相をお話しします』結城真一郎[著](新潮社)

10位「信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します! 5」明鏡シスイ[著](ホビージャパン)

〈文芸書ランキング 9月27日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2022年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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