【話題の本】『踊る菩薩 ストリッパー・一条さゆりとその時代』小倉孝保著

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■昭和の男社会を生き抜いた女

昭和30~40年代に一世を風靡(ふうび)した伝説の踊り子、一条さゆりの光と影を追った本格評伝。不遇な幼少期を経て結婚・出産後、生活のため踊りの世界に入り、やがて「特出し」など気前のいい脱ぎっぷりで花開く。

公然わいせつ容疑で何度も逮捕され、反権力の象徴ともいわれたが、一条は「ただ客を喜ばせたい一心やった」といい、客も一条に「観音様を拝むようにして、両の手を合わせていた」。47年の引退公演で逮捕され、刑務所へ。出所後は酒と男におぼれ、貧困、大けがの末、日雇い労働者の街、大阪・釜ケ崎で逝った。

本書は、平成9年に死去した一条のほか、一条を恩人と慕う漫才師・中田カウスら多数の関係者に話を聞いている。編集担当の鈴木崇之さんは「ド直球のノンフィクション。男社会でたくましく生きた姿は、女性にも勇気を与えてくれるはずです」といい、実際、9月1日の発売間もなく、40~50代の女性からの反響も相次ぐなど注目されている。

いつも陽気で周りを笑わせるサービス精神と、苦労をなめつくした者だけが持つ底深い優しさ…。そんな一条の生涯に戦後の日本社会、日本人の姿がだぶり、無性に昭和が恋しくなる。(講談社・2200円)

三保谷浩輝

産経新聞
2022年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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