【話題の本】『編めば編むほど わたしはわたしになっていった』三國万里子著

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■ニットデザイナー、半生を紡ぐ

人気ニットデザイナーが「『書く』ことは『編む』ことと似ている」とつづった初エッセー集が、9月末の発売から1カ月で3刷と好評だ。

昭和46年、新潟県生まれの著者いわく、「あんまりぱっとしない、ごく普通の女の半生」にまつわる29編を収録。確かにテーマは両親、祖父母、夫、子供といった身近な人々や、幼少期、中学、大学時代、社会に出てからの日常が中心だが、それら「ごく普通」の話が著者の感性、文章で物語となり、胸に迫る。

思いを寄せる相手と同じ銘柄のたばこを喫(す)う喜びに浸ったり(「三國さん」)、中学時代を「『自分という生き物』になるために繭を作っていたのかも」と振り返ったり(「早退癖」)、いつも「外の世界を開いてくれる」人だった母の弟を追慕したり(「ひろしおじ」)…。

「自分の昔のことを思い出すという感想が多い。読む人の記憶に届き、心をつかむ、そして読みながら幸せを感じられる文章。つくづく文才ってあるんだなと思わされます」と編集担当の松本太郎さん。

読者層は、女性が9割で30~40代中心というが、これは男性も読まなきゃ損。じっくりと幸せな気持ちに浸りたい。(新潮社・1650円)

三保谷浩輝

産経新聞
2022年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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