夢を持ち僻地へ移る人々

　筆者はかつて全国各地をドライブし、自分の目で日本を見て回るという経験をしてきた。その中で感じたのは、都市部がどこも画一化しつつあるのに対し、田舎は山あり海あり森林ありで、実に多様だということだ。人間の都合や効率に応じて設計された都市とは異なり、自然条件の制約の下で出来上がった山里は、それぞれ異なる貌を持つのだ。

　自然の制約があることは不便でもあるが、一方で大いなる魅力にもなりうる。実際、辺鄙で不便でありながら、思わず移り住みたくなるような、不思議な活気に溢れた地域も何度も見かけた。

　藻谷ゆかり『山奥ビジネス　一流の田舎を創造する』は、かつて栄えた地域を再生させるべく、奮闘する人々を描く。取り上げられているのは、様々なきっかけで過疎のエリアに移り住み、新しいビジネスと人生を創造しようとしている人々だ。彼らに共通するのは、自分がやりたいと思ったことを仕事にし、技術を向上させていること、そして夢を持っていることであるという。加えて彼らはタフであり、人とのつながりを創り出す能力も高いのだろう。筆者が見てきた魅力ある田舎は、彼らのような人々によって創られているのかと得心がいった。

　地方創生は今後の日本を考える上で欠かせないテーマであり、本書はそこに関わる多くの人の参考になることだろう。いつか、ここで紹介されている「一流の田舎」を訪れ、改めてこのことを考えてみたい。

• 新潮社
• 佐藤健太郎
• 藻谷ゆかり
• 山奥ビジネス

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