【気になる!】文庫『わが殿』畠中恵著
[レビュアー] 産経新聞社
内山家は80石で中程度の家柄。跡取りの七郎右衛門は、藩内で評判の弟ほどの才はないと自覚していた。だが、英明な藩主に見いだされ、借金返済を託される。藩の実高は2万8千石。入る金は年1万2千両なのに、借金は10万両-。
旧弊な藩士たちに妬まれ命の危機にさらされるも、藩校創設・洋式軍隊への転換・蝦夷地開拓-と藩政改革に大金を使う藩主を支えながら黒字化を目指す。
幕末に越前・大野藩の財政を再建した実在の藩士を主人公として、令和元年に刊行された歴史小説を文庫化。混迷の時代に新たな道を開く成功物語は痛快だ。(文春文庫・上巻737円・下巻770円)