応募が来ない…中小企業が採用で成功するために忘れてはいけない「3つの視点」

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応募が来ない…中小企業が採用で成功するために忘れてはいけない「3つの視点」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

中小企業の「採用が厳しい」といわれていますが、『採用がうまくいく会社がやっていること』(福留文治、児玉里美 著、かんき出版)の著者によれば、そこには3つの傾向が絡んでいるのだそうです。

① 「業界」や「会社」の「負の状況」が知られている!

② 独立志向の高まりにより「勤めたい人」が減っている!

③ 会社によって「採用への熱意」に大きな差がある!

(「はじめに・これからますます厳しくなる中小企業の採用」より抜粋)

まず①は、求職者の目が肥えていること。

インターネットで関心事を簡単に調べられる現代において、求職者は事前に会社、業界のことをよく調べています。そんななか、中小企業だから応募が敬遠されているのではなく、「会社や業界の実情」を知られているため敬遠され、応募そのものがないという現実があるというのです。

次に②は、労働力が減りつつあるなかで、さらに「会社勤めをしたくない」という独立志向の方が増えていること。

つまり、フリーランスなど独立への機運が高まる一方。「勤めてくれる」人が減っているわけです。

最後の③は、会社への熱意の問題です。

採用について危機感を抱いている大企業が、なりふり構わず「人集め」を必死に行っているそう。だとすれば知名度では劣る中小企業の採用が難しくなるのも当然です。

そこで社労士である本書の著者は、「いますぐできる」ことを中心に、採用ノウハウをさまざまな角度から明かしているのです。そんな本書の第1章「小さな会社だからこそできる『採用の強み』と成功法則」のなかから、きょうは「採用で成功する視点」に焦点を当ててみましょう。

採用で成功する視点1:環境を整える

採用に際してまず取り組むべきが、「職場環境を整える」こと。採用をしようというときは多くの場合が「急ぎ」であり、採用に充分な手間と時間をかけられないかも知れません。

しかし、はやる気持ちから「とりあえず求人広告を出し、とりあえず応募があった人を採用する」という手段を選んでしまうと、採用した人が期待はずれだったり、思いがけない労使トラブルが起こったりするもの。

忙しさを解消するための採用だったのに、かえって手間と時間がかかってしまうということになりかねないわけです。そこで、もし採用で失敗したくないのなら、「早く人を入れたい」という気持ちを一度ぐっと我慢すべきだと著者は主張しています。

なにごとも「準備が8割」なので、採用は職場の環境を整えてから行うようにするべきだということです。なお環境を整えるにあたり、着目するポイントは次の5つ。

① 給与 ②労働時間(休日) ③作業環境 ④アクセス ⑤人間関係

(37ページより)

これら5要素のうち、他者より劣っているものがひとつでもあると、応募率が悪くなって採用活動が厳しくなることに。したがって、まずはこの5要素すべてで平均点がクリアできているかを確認することが必要であるようです。

そして5つすべてで平均点が取れたら、5要素のうちどれかひとつを同業他社より秀でたものにすることも大切。①の給与を上げることが難しいなら、②の労働時間数や休日数で勝負するなど、「うちは他社よりもここが秀でている」という部分をひとつでもいいからつくるべきだということ。それが、他者との差別ポイントになるわけです。(36ページより)

採用で成功する視点2:コストをかけすぎない

中小企業の場合は大企業とは違い、社長や部長クラスの方が本業のかたわらで採用活動を行っているのではないでしょうか。

だとすれば採用にかかる費用はもちろんのこと、時間と労力というコスト(人件費)も併せて考えることが必要。採用広告にかかる費用は目につきやすいものの、人件費という内部のコストは見えにくく、意外とかさんでいることがあるというのです。

社長や部長クラスの人が採用活動に従事している場合、その人の時給単価を考えることも重要なポイント。

たとえば求人内容を考えて広告を出すのに3時間、ひとり面接をするのに準備を含めて2時間、選考に1時間かかったとしましょう。仮に時給単価が5千円とすると、ひとり採用するのに3万円の人件費がかかることになります。これを10人繰り返したら30万円。つまり、ひとり採用するのに社員ひとり分の月給と同じ程度のコストがかかるわけです。

人的コストを少なくするためにも、募集から採用決定までは、「狭く・深く・手早く」行う必要があります。

「たくさん集めてその中から選ぶ」のではなく、「数は少なくても、自社に合った一人に来てもらう」という考えにシフトしなくてはなりません。(41ページより)

人手不足の昨今では、募集を出せば勝手に人が集まるという状況ではなくなっています。

だからこそ、「たくさんのなかから優秀な人を獲得する」のではなく、「自社に合った人に来てもらう」ことが大切だということです。(40ページより)

採用で成功する視点3:価値観を共有する

では、自社に合う人とはどんな人のことを指すのでしょうか? このことについて著者は「仕事に対する“価値観が合っている人”だと述べています。会社の理念を読めば、会社の価値観がわかるはず。

ですからそれに加えて、「求職者に対する価値観」も伝えるようにすべきだというのです。具体的にいえば、「社員になにを約束できるか」をことばにすることが重要。

たとえば、「入社すると一生モノのスキルを身につけられる」とか「仕事は大変だけれど、若いうちに経験を積んでお金を稼げる」など、「ワークライフバランスが確保されている」や「お互いに尊重し合える職場環境にある」なども立派な約束。

もし自社の価値観が、「対顧客」のものだけであったら、次の「   」の中を考えてみるべきだといいます。

私たちは、働く人に「   」を約束します。

(45ページより)

この「   」のなかが、自社の「求職者に対する価値観」だということです。(43ページより)

著者のなかには、採用をしっかり行っている中小企業は少ないという実感があるのだそうです。しかし、「応募が少ない」とはいうものの、まだまだ「できることがたくさんある」と断言してもいます。

つまり、できること可能な限り行う会社なら、採用活動は必ずよい方向へ進むということ。本書を参考にしながら、よりよい採用を実現させたいところです。

Source: かんき出版

メディアジーン lifehacker
2023年1月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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