「人間の生を丸ごとを肯定してくれたような安心感」先輩直木賞作家も称賛する直木賞受賞作『しろがねの葉』ベストセラー1位に

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 2月7日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『しろがねの葉』が獲得した。
 第2位は『荒地の家族』。第3位は『この世の喜びよ』となった。

 今週は第168回芥川賞・直木賞の受賞作が1位から4位を独占。1位の『しろがねの葉』と4位の『地図と拳』が直木賞。2位の『荒地の家族』と3位の『この世の喜びよ』が芥川賞受賞作となっている。

 1位の『しろがねの葉』は千早茜さん初の時代小説。戦国末期の石見銀山で生きる少女ウメの生き様を描く。天才山師・喜兵衛に拾われたウメは銀山に出入りしながら喜兵衛から銀掘の知識を学ぶ。男社会の銀山で成長するウメに女であるがゆえの苦難が待ち受ける。

 千早さんと対談した作家の村山由佳さんは《銀掘の男たちから女であることをバカにされ、女らしく生きろと言われて猛反発する一方、男を求め、男に慰められもする。そうした彼女の矛盾や弱さをありのままに描くことで、人間の生を丸ごと肯定してくれたような安心感を読者としては覚えました。》と称賛。千早さんは《ウメは男を支えるタイプに設定しようかとも考えたんですが、次第に女人禁制の間歩(坑道:編集部注)に入らせたいと強く思うようになりました。間歩の内部も、初潮を迎え、間歩を出た彼女の女としての人生も描ける。そうして、間歩に惹かれ、間歩を追われ、最後は自らが間歩となって男たちを受け容れるウメという女が誕生しました。彼女は生命力の塊なので、書くたびにへとへとになりました。》と主人公に込めた思いと創作の苦労を語っている。

1位『しろがねの葉』千早茜[著](新潮社)

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!(新潮社ウェブサイトより)

2位『荒地の家族』佐藤厚志[著](新潮社)

元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。40歳の植木職人・坂井祐治は、あの災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。(新潮社ウェブサイトより)

3位『この世の喜びよ』井戸川射子[著](講談社)

思い出すことは、世界に出会い直すこと。静かな感動を呼ぶ傑作小説集。娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼びさましていく芥川賞受賞作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。最初の小説集『ここはとても速い川』が、キノベス!2022年10位、野間文芸新人賞受賞。注目の新鋭がはなつ、待望の第二小説集。二人の目にはきっと、あなたの知らない景色が広がっている。あなたは頷いた。こうして分からなかった言葉があっても、聞き返さないようになっていく。(表題作「この世の喜びよ」より)(講談社ウェブサイトより)

4位『地図と拳』小川哲[著](集英社)

5位『審議官-隠蔽捜査9.5-』今野敏[著](新潮社)

6位『#真相をお話しします』結城真一郎[著](新潮社)

7位『出遅れテイマーのその日暮らし 10』棚架ユウ[著](マイクロマガジン社)

8位『賢者の弟子を名乗る賢者 18』りゅうせんひろつぐ[著](マイクロマガジン社)

9位『名探偵のままでいて』小西マサテル[著](宝島社)

10位『君のクイズ』小川哲[著](朝日新聞出版)

〈文芸書ランキング 2月7日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年2月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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