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- 浮遊
- 価格:1,650円(税込)
デビュー以来、次々「分類不能」で「挑発的」な作品を発表し、日本文学界と読者を揺さぶり続ける作家、遠野遥。その第4作となる『浮遊』は、高校生の「ふうか」を主人公としたホラーゲーム小説です。
冒頭の20ページを公開いたします。ぜひお楽しみください。
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乗り込んだ電車は空いていて、席に座ることができた。コートのポケットからスマホを取り出すと、父親からの電話とLINEが来ていた。
ふうかちゃん、期末テストおつかれさまです。今日が最終日でしたよね。予定表を見ました。最近連絡がないけれど、元気ですか。連絡がないということは、とくに困っていることがないということだから、それはそれで良いことなのかもしれませんね。ちなみにですが、お父さんも元気でやってます。
さっきの電話は、気にしないでください。たまたまテレビで、何年以内に何パーセントの確率で首都直下地震が来るとか来ないとかそういう特集をやっていて、つい心配になってかけてしまっただけです。
お友達のおうちは、地震が来たときの備えはしてありますか。心配性だと思われそうですが、やはり準備はしておいたほうがいいとお父さんは思います。非常時の水や食料はありますか。懐中電灯とか、蝋燭とかマッチもあったほうがいいかもしれません。言い出したら切りがないのですが、うっとうしいと思われそうなのでこのへんにしておきます。
テレビでやっていましたが、災害時に必要なものが一式入ったリュックなども売っているそうだから、そういうのを買っておくのもいいと思います。ふうかちゃんも、良かったらネットで調べてみてください。けっこうおしゃれなのも、今はあるみたいです。
もし気に入ったのがあったら、お父さんが買って送ってあげるので、言ってください。なんでもかんでも買ってあげるのは良くないと思うけど、これはふうかちゃんの命にかかわることだからね。そういうのはなんでも買ってあげます。
追伸:忙しいと思うけど、気が向いたらたまには帰ってきてね。
思った通り、大した内容ではなかった。父親から来るLINEは、読み手のことを考えていない。スクロールしないと読めないような長文はものすごく一方的だ。短いやりとりならそこまで苦ではないが、こうも色々なことが書かれていると、どこから返事をすればいいのかわからなくなる。
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