「生々しい私の大学生活です」宮田愛萌が初小説に反映させた実体験を明かす【宮田愛萌×三宅香帆対談】

対談・鼎談

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きらきらし

『きらきらし』

著者
宮田 愛萌 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103549413
発売日
2023/02/28
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

万葉集を愛する二人の多すぎる共通点

[文] 新潮社


初小説集『きらきらし』を上梓した宮田愛萌さん(C)熊木優

日本最古の和歌集『万葉集』をモチーフにした初小説集『きらきらし』(新潮社)を上梓した宮田愛萌さん。デビュー作の刊行を機に、『万葉集』への造詣が深い三宅香帆さんとの対談が実現した。ともに古典を愛する二人が、万葉集から源氏物語、近現代の文学を引き合いに出しながら、「文学オタク」に共通する世界を語り合った。

日向坂46で実写化するなら

三宅 お久しぶりです。『きらきらし』読ませていただきました。初めて書いた小説と思えなくてびっくりしました。書き慣れている感じがして。

宮田 お久しぶりです、ありがとうございます。仕事などで休んで大学の出席日数が足りないときに、小説をレポートにつけて出したりしていたからかもしれません。

三宅 すごい、教授は愛萌ちゃんの小説をすでに読んでいたんですね。

宮田 「私が読んで面白い話を書いてきてください」と言われたけれど、日常で面白い話がなかったので、小説を書いたんです。

三宅 そうだったんだ! 万葉集から着想を得た小説集ということですが、現代物で読みやすくて、いろんな方が読めそうだと思いました。小説の中の恋も様々な形があって、男女もあるし、同性同士もあるし、恋愛未満のような感情もあって、関係性がいろんな形で描かれているのが面白かったです。

宮田 嬉しいです。日向坂46にいた時に、三宅さんに影ちゃん(影山優佳さん)と二人でインタビューしていただいて、私と三宅さんが万葉集や源氏の話でめちゃめちゃ盛り上がっちゃって、影ちゃんが置いてきぼりになっていましたよね。二人が話してるのが面白いと言ってくれて。

三宅 ありがたい。優しいですね……。今回、「万葉集からこの歌を持ってくるんだ!」という驚きが楽しくて。モチーフにした五首で短編を書くのは最初から決めていたんですか。

宮田 全然決めてなくて、パラパラ読みながら決めた感じです。

三宅 例えば「ハピネス」も、モチーフの歌は別に女性同士の恋愛をうたっているわけじゃないですよね。それをああいう形で膨らませるのはどう考えたんですか? 発想がすごい!

宮田 妄想をするときには、ある情景とかを考えて、なんとなくこういう感じかなって。あと私、高校生のときは百合文化に理解のある子たちの中で過ごしてきたので、それも影響していると思います。

三宅 女子校ですもんね。私は日向坂46で実写化するなら誰だろうと妄想しながら読んでいました。愛萌ちゃんのイメージはありますか?

宮田 そうですね。ビジュアルと中身は違っていて、見た目だと「ハピネス」のカレンはひな(河田陽菜さん)ですかね。華奢で、かわいくって……みたいな。中身はカレンと全然違いますけど。

三宅 確かにかわいい! 私はカレンを丹生ちゃん(丹生明里さん)かなと思いながら読んでいました。

宮田 確かに。お兄ちゃんいるし!

三宅 希南は愛萌ちゃんに近いと思いました。この中で、愛萌ちゃんが自分っぽいと思うキャラはいますか?

宮田 一番私っぽいなと思うのは「好きになること」の瑞葉です。本当はだらしないくせに外では見栄を張る感じとか(笑)。

三宅 えー! 見えない。

宮田 普段はちゃんとしてると思うんですけど、中高の友達の前とかだと。

三宅 意外です。「つなぐ」には、万葉集の挽歌(他人の死を悼む歌)が出てきましたよね。私は相聞歌(恋愛の情などを伝える歌)も好きですが、挽歌も染みるものがあるなと思います。

宮田 私は挽歌をがっつり勉強していたわけじゃなくて、相聞の方をメインに歌垣(古代、男女が求愛のために歌を詠み合う風習)とかを授業で取っていて。でも深みを感じるのは挽歌の方で、切実感があってそこが面白いと思っていました。もう少し時間があれば学びたかったなという後悔もあって。

三宅 私は挽歌なら、万葉集の中でも前半の時代の柿本人麻呂が好きです。「和歌はこういうふうに詠む」というルールが決まっていなかった時代に、現代人にも染みる歌を作ったのがすごいと思っていて。平安時代の歌よりも、むしろ現代っぽい感じがします。

宮田 昔も今も、感情って変わらないんだと思いますよね。形式が決まってないからこそリアリティがあるというか、生々しさが伝わる感じがして。

三宅 めっちゃわかります。例えば「景色を詠む歌」みたいにジャンルもあんまりはっきり決まってない感じがすごく現代っぽい。

宮田 現代短歌とかも結構そんな感じですもんね。万葉集は、見たものを本当に詠みたいから詠んでいる感じ。

三宅 あと、男女の関係性も、結構男女平等っぽかったり。女性もこれだけいっぱい和歌を詠んでいるって世界的に見てすごい。

新潮社 波
2023年3月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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