「赤ちゃんはママを選んで生まれてきます?んなわけねー」夢眠ねむがグッときた等身大の育児漫画

レビュー

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おさるのままごと

『おさるのままごと』

著者
せきやゆりえ [著]
出版社
東京書籍
ISBN
9784487816668
発売日
2023/03/06
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

怒りも悲しみも愛情も全部ある 等身大の育児漫画

[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)

 せきやゆりえさんと、夫・ぴーさんが夫婦に、親になっていく姿が描かれている。途中には馴れ初めも触れられているけれど、全てが竹を割ったような清々しさで、他人のラブラブ具合に胃もたれ……みたいなことがないのが女友達の赤裸々なおしゃべりのようで心地よい。世の中にはたくさん育児漫画が溢れているけれど、聖人しかいないの!?っていうキラキラ育児日記やどろどろした愚痴だけの漫画じゃなく、怒りも悲しみも愛情も全部ちゃんとあるのがこの本のいいところ。ゆりえちゃんがめちゃくちゃ歪んだ顔で「ごめんね!!!」と謝ってたり、ツーッと泣くシーンだったり、自分もこうでいいんだよね、こうやって他人と関わって家族になっていくんだよね、と共感できる。

 私はインスタグラムでの連載を読んでいたけれど、書き下ろしも満載で嬉しい。特にゆりえさんが「うるせ~!!!」と怒りをぶちまけているページの「赤ちゃんはママを選んで生まれてきます?んなわけねー」「ママの顔になるってなんだよ!!自分の子に言われるんならわかるけど!!!」という部分に頷きまくり。良かれと思ってだか知らぬが、世の中にはそういう表現が多すぎる! そんな意味でも、産んでない人(私も含め女性、男性とも)にもぜひ読んでいただきたい作品である。妊婦さんや子育てをしている人への想像力は昔から必要だったはずなのに、最近やっと声が上がって理解が増えてきた。それでもまだまだ足りない。「妊娠やつわりは病気じゃないからね」なんて言う前に、等身大の育児漫画で気持ちを知るのはありだ。実際、手作り離乳食の呪縛に苦しめられているママが市販のベビーフードについて描いているゆりえさんの漫画を読んで安心して泣いていた。笑って泣けて救われる。時系列ごとの1ページ線画がドキッとするくらい愛しい情景を切り取っていて、親族でもないのにグッとくるので必見。

新潮社 週刊新潮
2023年3月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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