【産経の本】『リトアニアが夢見た明治日本』平野久美子著

■バルト海から見た「坂の上の雲」

リトアニアにとって明治ニッポンは「坂の上の雲」だった―。

本書はバルト三国、リトアニアのステポナス・カイリースという知識人が、１９０６年に著した日本論を紹介する。カイリースは後に祖国をロシア帝国からの独立へ導いたリーダーの一人である。

０５年、日露戦争で日本がロシアを破ったことは、ロシアの圧政に苦しんでいたリトアニアの人々を熱狂させた。ヤポーニア（日本）とはどんな国なのか、なぜロシアを負かすことができたのかと。

１００年以上前の日本論でカイリースは、礼儀正しく誇り高いという日本人の気質をとりあげた。国際ルールを守り、捕虜を人道的に扱ったことなどを驚きとともに好意的に受けとめ、「私たちは多くのことを日本人から学んだり、日本の例にならったりする必要がある」と述べる。

著者はリトアニアに赴き、日本論の初版本を手にする。ゆかりの地やカイリースの親族などを取材。リトアニアの歴史や文化、自然の魅力を紹介し、日本との共通点にも言及している。本書を読むと、カイリースが称賛した日本人であり続け、次世代のため国を耕し続けていかなければならないという気にさせられる。（産経ＮＦ文庫・１１７０円）