『美しき人生』蓮見圭一著
[レビュアー] 産経新聞社
雑誌などでライターをしている阿久津は、息子が通っていた静岡・沼津の高校で校長の真壁のスピーチに心引かれ、取材を申し込む。真壁は生後間もない頃から両親がおらず、北海道の田舎町で父方の祖母に育てられ、中学生のとき沼津の母方の実家へ。中学、高校、大学と成長する過程で出会った人々との思い出、彼が恋した女性との切ない過去が語られる。
砂地に水がしみこむように物語が胸に広がる。語られるさまざまな言葉が、年配の人には過ぎ去った日々を思い起こさせてくれるはずだ。ベストセラー『水曜の朝、午前三時』の著者による書き下ろし長編。(河出書房新社・1870円)