【気になる!】新書 『海のアルメニア商人』
[レビュアー] 産経新聞社
交易の民アルメニア人は古代から国家の興亡を繰り返してディアスポラ(民族離散)を生み、黒海とカスピ海の間にある本国の人口の3倍近い推計約800万人が海外に居住。本書は、その南アジアから東アジアでの活動を描いた本だ。
かつてユーラシア内陸の巡回商人として活躍していたが、近代には海の商人に変貌し、活動がインドから日本に及んだことが、歴史学者の著者による調査で明らかになった。インドに本社を置くアルメニア商船が日本に就航、商社もあったという。離散民族の生存をかけた交易戦略と欧州の大商社との違いが興味深い。(重松伸司著、集英社新書・1155円)