痴漢冤罪から遺産相続まで…迷惑な法律の「落とし穴」から身を守る回避術とは

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我が身を守る法律知識

『我が身を守る法律知識』

著者
瀬木 比呂志 [著]
出版社
講談社
ジャンル
社会科学/法律
ISBN
9784065312841
発売日
2023/03/16
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

無益で迷惑な法の落とし穴回避術

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 離婚訴訟では現場の無断撮影やスマホのデータの無断コピーは不貞の証拠にならないし、配偶者の不倫相手には慰謝料を請求できない―と聞いて安心した浮気なアナタにゃ悪いが、これは欧米の話だそうな。

 知り合いの社長も、1千万円の不払いで相手を地裁に提訴し、完全勝訴はしたものの、解決には2年かかって弁護士への支払いは3百万以上。この国の法務サービスは後進国並みと嘆いてたけれど、民事のみならず刑事の面でも、人質司法や高い有罪率、尽きない冤罪等々、問題は山積みです。

 そういう自称法治国家でびくびく暮らしてるアナタやワタシの必読書、それが『我が身を守る法律知識』。交通事故に痴漢冤罪、近所の騒音に身内の遺産相続その他いろいろ、民事/刑事、訴訟/裁判外、訴える/訴えられるの両面で、法と司法の抜け穴活用術ではなく、落とし穴回避術がわかる。我が身を守るには、役立つ法を使う知識より迷惑な法を避ける知識が必要な国。衰退途上国という立ち位置は法の分野でも盤石だわ。

 著者の瀬木比呂志は30年以上の裁判官経験と、入門書を含む数多くの著作を持つ法学者。理論と理想をベースに実務と現実を語り、自己や同業者、さらには司法や政治への批判さえ厭わない。法の惨状の根幹にあるニッポンの古さ・駄目さまでを教えてくれるからこの新書、アナタの子や孫の高校生大学生にも薦めます。おかしな実社会の根にあるおかしな法を知り、生き抜くための教科書になるもの。

新潮社 週刊新潮
2023年5月25日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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