『声をあげて』五ノ井里奈著
[レビュアー] 産経新聞社
陸上自衛隊での性被害を実名で訴えた元自衛官による闘いの記録だ。小学5年時に東日本大震災を経験。避難先で親切にしてくれた女性自衛官にあこがれたことが、入隊動機の一つだったという。
だが演習場での訓練中、体を触られたり押し倒されたりした。上司に相談しても解決に至らず、わずか1年半で退官を決意し世論に訴えると、いわれなき中傷を受ける羽目に。粘り強い行動で当事者4人の直接謝罪を引き出した場面の描写は、緊迫感がある。
自衛隊関係者からインターネットを通じて著者に寄せられた隊内でのハラスメント報告は、あっけにとられる。(小学館・1650円)