【産経の本】『米軍に暴かれた日本軍機の最高機密』野原茂著

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■「最強」零戦の性能を徹底分析

太平洋戦争で米国軍などにとらわれた日本軍機に焦点を当てた一冊。米軍にとって緒戦の最大の脅威は、航続力や格闘性能に優れた日本軍の零戦の存在だった。米軍は総力をあげて零戦を完全な状態で手に入れ、その高性能の秘密を探ろうとした。

昭和17年6月、米軍はアリューシャン列島アクタン島で初めて零戦二一型を獲得。修復、整備ののち飛行テストを繰り返し、零戦の長所・短所を調べ上げた。その結果、ドッグファイト(接近戦)を得意とする零戦に対し、米軍は1対1では戦わず、2機1組で、零戦より勝る高速を利用して一撃離脱する戦法を多用した。弱点を突かれた零戦は苦戦を強いられることになる。

さらに米軍は、日本機の獲得、調査を専任とするTAIU(航空技術情報隊)を編制。零戦各型をはじめ、海軍の紫電改や天山、陸軍の隼、飛燕、疾風など、ほぼすべての機種を奪ってテストし、日本軍機の最高機密を丸裸にした。

本書は秘蔵写真420枚とともに、アリューシャン列島のほか、ニューギニア島、サイパン島、フィリピンなど各地の実例を解説。太平洋戦争航空戦の〝舞台裏〟を知るうえで、大きな価値があるだろう。(光人社NF文庫・1150円)

産経新聞
2023年5月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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