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- 命とられるわけじゃない
- 価格:902円(税込)
大好きな父、最愛の猫〈もみじ〉、そして確執のあった母。三年続けて見送った平成最後の春、母の葬儀を前に現れたのは、一匹の小さな猫だった。見た目は全然違うのに、なぜか〈もみじ〉そっくりなその猫との出会いが、止まっていた時を再び動かし……。
「どれほどしんどく思えても、〈命とられるわけじゃない〉のだ」。猫と亡き父に教わった優しい気づきと、愛すべき猫たちに心洗われる大人気エッセイ『命とられるわけじゃない』(村山由佳・著)より、冒頭部分を公開します。
***
はじめに
気がつけばかれこれ四半世紀以上、恋愛小説と呼ばれる物語を書き続けてきた。
おかげで〈恋愛のエキスパート〉的な立ち位置で意見を求められたり、お悩み相談を受けたりすることが多々あるのだけれど、正直なところ私にはまったくその資格がない。
だってそうだろう。もし本当にその道のエキスパートなのだとしたら、恋愛であれ結婚であれ、本来譲ってはいけないことまで相手に明け渡すという最低最悪の失敗を、あんなに何度もくり返すはずがないのだから。
とはいえ、ありがたいことに今の私には、自分で言うのも何だけれどしっかりと地に足のついた生活がある。やっとだ。物書きとして仕事をするようになってから四半世紀以上かかってやっと、その実感を言葉にする自由を手に入れられた。
願わくは、否応なく素顔が露わになるこうした文章の中でも、できる限り自分や人に嘘をつかずに、今わかっている〈ほんとうのこと〉と向き合っていけるといいなあ、と思う。今度こそはたぶんずっとのパートナーや、増えてゆくばかりの生きものたちとの暮らしについても、また血縁や、友人たちや、かなり苦手だけれど必要な世間とのやり取り、百のうち九十七くらいはしんどさのほうがまさる仕事、などなどについても、淡々と平常心で書きとどめていけるといいなあ、と思う。
生きていくうちには呑み込みがたいことも起こるけれど、一つひとつ言葉に置き換えてゆくことで心に整理をつけて、やがて自分なりの妥当な落としどころを見つけられるといい。
そんな具合に、我が身に起こることをできるだけそのまんま肯定してゆく姿勢を私に教えてくれるのは、じつのところ、「猫」だ。何の誇張でも比喩でもなく、子どもの頃から身近にいてくれた猫たちこそが、私にとっては世界のとっかかりであり、時にはすべてであったりする。
だからまずは猫の話をしよう。
ずっとそばにいたのに逝ってしまった最愛の猫と、その別れからきっかり一年後にめぐり合った小さな猫の話を。
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