【話題の本】『呪術の世界』小松和彦監修

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■SNSで話題沸騰

言葉に霊的な力が宿るとする「言霊(ことだま)信仰」を持ち、独自の優美な和歌文化を紡いできた日本人。その裏側で、大陸から最先端のテクノロジーとしてもたらされた呪禁道(じゅごんどう)や陰陽道(おんみょうどう)、密教といった呪術にも魅了され続けてきた。古代から現代まで連綿と続く、ドロドロの怨念と切ない祈りが入り交じった呪術の世界をひもとく。

平城京跡から出土した鉄くぎが刺さったままの「呪いの人形(ひとがた)」や、魔を踏み破る陰陽道のステップ「反閇(へんばい)法」の文書など、歴史の教科書には載らない史料がずらり。民俗学者の写真家、内藤正敏の代表作「婆バクハツ!」が不気味さをかき立てる。

伝奇漫画家のレジェンド、諸星大二郎の新作描き下ろし漫画を収録したことも手伝って、発売前からSNSを中心に話題が沸騰。版元の平凡社によると、発売後数日もたたずにアマゾンや楽天などのネット書店で売り切れが続出する事態に。1週間で重版が決定するなど「ムック本としては異例の売れ行き」だという。

人間の負の感情から生まれる「呪い」をモチーフにした少年漫画『呪術廻戦』が大ヒットするなど、いまなお日本人の心をとらえて離さない呪術。その源流をたどれる一冊だ。(平凡社・2750円)

村嶋和樹

産経新聞
2024年8月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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