「みんな大変だったよね」コロナ禍の気持ちを分かち合いたい 直木賞受賞作『ツミデミック』に込めた思い[文芸書ベストセラー]

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 8月27日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『成瀬は天下を取りにいく』が獲得した。
 第2位は『成瀬は信じた道をいく』。第3位は『暗殺』となった。

 4位以下で注目は10位にランクインした『ツミデミック』。7月17日に発表された第171回直木賞の受賞作。同作はコロナ禍での犯罪を描いた短編集。先の見えない不安のなか犯罪にかかわってしまった多様な人々の人間模様が描かれる。著者の一穂ミチさんは同作の刊行記念インタビューで、もともとは統一感をもたせるつもりはなかったと語っている。各短編は掲載誌の月々のテーマ――「違う羽の鳥」は“繁華街”、「ロマンス☆」が“出会い”、「憐光」が“帰郷”、「特別縁故者」が“お金”、「祝福の歌」が“隣人”――に合わせて書いており、執筆時期はコロナ禍の最中であったため、コロナ絡みの犯罪のニュースを目にすることが多く、結果的に「コロナ禍での犯罪を描いた短編集」になったと明かしている。

 また一穂さんは各短編を書いている間にもコロナの状況が刻々と変化し、それに合わせ自身の心境も変化していったと告白する。その結果、それぞれの物語には憂鬱から明るい気持ちまで、そのときどきの思いが反映された作品になったと振り返っている。一穂さんはインタビューの最後に《ひょっとしたらコロナ禍初期の緊迫感なんて、みなさんもう思い出したくもないかもしれないですけれど。でもあの三年間を一緒に追体験するような気持ちで、「みんな大変だったね」「みんな必死だったよね」ということを私は分かち合いたいです。あまり人に言えない、否定されるかもしれない感情も分かち合えるのが、物語のいいところだなと思うので……誰にも言えない、だけどたしかにあったコロナ禍の記憶を、ぜひ一緒に噛み締めていただけると嬉しいです。》と同書に込めた思いを語っている。

1位『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈[著](新潮社)

中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない!話題沸騰、圧巻のデビュー作。(新潮社ウェブサイトより)

2位『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈[著](新潮社)

成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!?読み応え、ますますパワーアップの全5篇!(新潮社ウェブサイトより)

3位『暗殺』柴田哲孝[著](幻冬舎)

元総理が凶弾に倒れ、その場にいた一人の男が捕まった。日本の未来を奪った2発の弾丸。本当に”彼”が、元総理を撃ったのか?日本を震撼させた実際の事件をモチーフに膨大な取材で描く、傑作サスペンス。(幻冬舎ウェブサイトより)

4位『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。ANOTHER』汐見夏衛[著](スターツ出版)

5位『本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生1』香月美夜[著](TOブックス)

6位『クスノキの女神』東野圭吾[著](実業之日本社)

7位『とあるおっさんのVRMMO活動記30』椎名ほわほわ[著](アルファポリス)

8位『バリ山行』松永K三蔵[著](講談社)

9位『近畿地方のある場所について』背筋[著](KADOKAWA)

10位『ツミデミック』一穂ミチ[著](光文社)

〈文芸書ランキング 8月27日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2024年8月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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