【話題の本】『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』阿部幸大著

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

■人文学復権へののろし

自分の学生時代にこの本があれば―。そんなため息があちこちから聞こえてきそうな、人文系の論文執筆を一新する指南書が登場した。

自然科学系と異なり、決まったフォーマットが確立されていない人文系の論文。日本の大学教育では執筆の方法論がカリキュラム化されておらず、アカデミックな価値に疑問符が付くこともしばしばだ。日本だけでなく英語圏の学術誌に論文を書いてきた著者が、初学者でも独力で論文を書ける知識と技術を伝授する。

「問いとそれに対する答え」という既存の論文観から脱却し、自分のアーギュメント(主張)を徹底的に鍛えあげ、先行研究を批判的に更新していくこと。具体例に即して展開される著者の主張もまた明快だ。

光文社書籍編集部の江口裕太さんによると、「長く大学で読まれる定番のロングセラー」を目指したという。だが、発売1カ月余りで5刷2万5000部といきなりの大ヒット。東大・京大生協でも人文書部門で売り上げ1位に輝き、学生たちから圧倒的な支持を受けている。

自身の研究生活を振り返り、人文系の論文執筆は「世界と接続されている」と高らかに宣言した著者。人文学復権に向けたのろしが上がった。(光文社・1980円)

村嶋和樹

産経新聞
2024年9月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

産経新聞社「産経新聞」のご案内

産経ニュースは産経デジタルが運営する産経新聞のニュースサイトです。事件、政治、経済、国際、スポーツ、エンタメなどの最新ニュースをお届けします。