正しい知識を持ち、しっかりと治療を続ければ、99%は失明を防ぐことができる
日本における中途失明原因の第1位である「緑内障」。
しかし、「緑内障」について正しい知識を持ち、しっかりと治療を続ければ、99%は失明を防ぐことができるといわれています。
自覚症状なく進む緑内障の症状と、よい眼科医の選び方を、眼科専門医であり、「YouTubeチャンネル 眼科医平松類」でもおなじみの平松類医師が刊行した『悩み・不安・困った!を専門医がスッキリ解決 緑内障』(新星出版社刊)より一部再編集して解説します。
緑内障の視野欠損はどう進むか
【欠損の自覚症状はほとんど現れない】
緑内障は、視神経がダメージを受けることで、視野が徐々に欠けていく病気です。視神経は、網膜の神経節細胞から伸びた約120万本もの神経線維が束になったもので、それぞれの神経節細胞および神経線維が、視野として「見える」部分をそれぞれ受けもっています。つまり、ある神経節細胞・神経線維がダメージを受けると、担当していた部分の視野が欠けるようになります。
しかし、神経線維は約120万本もあるため、少々傷ついても視野が欠けたようには感じられません。さらに緑内障の初期には、私たちが日常生活で「見る」ために使っている視野の中心部分(中心視野)には欠損は生じず、そこから少し外れた鼻側から欠損が起こり始めることが多いため、視野の異常に気づくことはほとんどありません。中期に入ると、視野の欠けが周辺から徐々に広がりますが、見えない部分の情報を脳が補ったり、片目の視覚欠損をもう一方の目が補ったりするようになるため、まだ自覚症状としては現れないのです。そして後期になると、見える範囲がわずかになったことで、視野欠損を自覚するようになります。しかも、そこに至るまでは自覚症状がないことから、「急に視野が悪くなった」と感じることが多いです。
視野欠損進行のイメージ
一度欠けた視野は、元に戻ることはありません。そのため、視野欠損が広がった後期になると、日常生活にも不自由が生じるようになります。
視野と視力は違う
【視野は「目を動かさないで見える範囲」のこと】
緑内障と診断された患者さんのなかには、「視力は問題ないので、大丈夫だと思うのですが」とおっしゃる方がいます。しかし、緑内障は視力ではなく、「視野」に異常が出る病気なのです。
視野は、目を動かさないで見える、上下左右の範囲のことをいい、目を動かさずに見る1点(固視点)を中心にして、角度で表します。目に異常がない場合、片目ごとに、耳側約100度鼻側約60度、上方約60度、下方約75度と、広い視野があります。
一方で、視力は対象物を見分けられる能力のことです。視力は視野の中心部で高く、周辺部になるほど低くなります。緑内障では、視野が欠ける「視野欠損」が起こりますが、どんな人の目にも視野の欠けている部分があります。それは「盲点」と呼ばれ、見ようとする1点より耳側にあります。
盲点を実感する方法をひとつ、ご紹介しましょう。まず、両腕を前に伸ばし、両手の人差し指を立てます。右目で左の人差し指の爪先を見つめます。そのまま右人差し指をゆっくり右へとスライドさせると、左人差し指から20~30cmほど動いたところで、右の指先が消えるポイントがあります。これが盲点です。
盲点の場合、視野の欠損は一部分だけですが、緑内障ではまだらに欠けていくことから、視野の欠けを実感しにくいとされています。
平松類(ヒラマツルイ)眼科専門医・医学博士。緑内障・網膜硝子体・白内障・眼科一般・トラベクトームライセンストレーナ。二本松眼科病院副院長。「安心できる治療を一緒に進めていきたい」という患者に寄り添った診察で、日本全国から患者が訪れる。登録者数25万人を超えるYouTubeチャンネルでは、患者から寄せられるさまざまな質問にわかりやすく答え、定期的にYouTubeライブも開催。NHK『あさイチ』、TBSテレビ『ジョブチューン』、テレビ朝日『林修の今でしょ!講座』、テレビ東京『主治医が見つかる診療所』などのテレビ番組のほか、『読売新聞』、『日本経済新聞』、『毎日新聞』、『週刊文春』などの各メディアに出演、執筆も行う。著書に『自分でできる! 人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)、『1日3分見るだけで認知症が予防できるドリル』(SBクリエイティブ)、『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書)、『「老害の人」にならないコツ』(アスコム)など多数。
平松類/イラスト 熊猫手作業社
株式会社新星出版社のご案内
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生活実用書、語学入門書、ビジネス実用書、児童書、各種資格試験問題集などを出版している。2023年10月に創業100周年を迎える老舗実用書出版社。2020年より、生活に役立つ情報をお届けするWEBマガジン、Fun-Life!を運営中。
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