「体温のある科学」直木賞を受賞した伊与原新『藍を継ぐ海』がベストセラー1位 南沢奈央も感嘆[文芸書ベストセラー]

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 1月28日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『藍を継ぐ海』が獲得した。
 第2位は『謎の香りはパン屋から』。第3位は『あえのがたり』となった。

 1位に初登場の『藍を継ぐ海』は1月15日に発表された第172回直木賞受賞作。著者は『月まで三キロ』(新潮社)や『宙わたる教室』(文藝春秋)など、気象や天文など科学的な要素を織り交ぜた人間ドラマで知られる伊与原新さん。本作は科学を下敷きに自然や生命の「継承」を描いた物語五編が収録さた短編集。

 俳優の南沢奈央さんは『藍を継ぐ海』の書評で、同作で描かれているのは《体温のある科学》と評している。また収録された短編「夢化けの島」については《山口県の見島へ、地質調査にやってきた歩美と、萩焼で使う見島土を探しに来た光平が出会い、土地の生い立ちに触れながら萩焼の歴史を辿っていく物語。》と紹介し、《「焼き物とか粘土が科学と関係あるなんて」と光平が呟くが、まさに同感だった。伝統的な職人仕事の陶芸と科学は交わることはないと思っていた。ところがどうだ、土を知ろうとすると1200万年前の島の形成まで遡ることになる。さらにその歴史ある地の土を使った器に今も夢をかける人がいて、これからも形として残り、想いが繋がっていく。すごいロマンではないか。》と感嘆を綴っている。

1位『藍を継ぐ海』伊与原新[著](新潮社)

なんとかウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子。老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性。山口の島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男――。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。きらめく全五篇。(新潮社ウェブサイトより)

2位『謎の香りはパン屋から』土屋うさぎ[著](宝島社)

謎はクロワッサンのように折り重なり、カレーパンのように刺激的!パン屋さんでの〈日常の謎〉を解く“美味しい”ミステリー(宝島社ウェブサイトより)

3位『あえのがたり』加藤シゲアキほか[著](講談社)

2024年元日、能登半島を襲った大地震によって多くの人が傷つけられました。残念ながら、小説を読むだけでは暖を取ることも、おなかを満たすこともできません。ですが、いつか、魂を励まし、心に寄り添える力が物語には宿っていると信じています。さて、奥能登地域の農家では、古くから稲作を守る“田の神様”を祀り、感謝をささげる「あえのこと」という儀礼が行われてきました。「あえ=おもてなし」、「こと=祭り」をあらわします。物語によるおもてなし「あえのがたり」のために集まったのは、今、もっとも新作を待たれている10人の小説家。10人の作家による、1万字のおもてなし。ぜひご堪能ください。(講談社ウェブサイトより)

4位『楽園の楽園』伊坂幸太郎[著](中央公論新社)

5位『歌集 ゆふすげ』美智子[著](岩波書店)

6位『ゲーテはすべてを言った』鈴木結生[著](朝日新聞出版)

7位『お気楽領主の楽しい領地防衛 7 ~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に~』赤池宗[著](オーバーラップ)

8位『架空犯』東野圭吾[著](幻冬舎)

9位『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈[著](新潮社)

10位『捨てられた僕と母猫と奇跡 心に傷を負った二人が新たに見つけた居場所』船ヶ山哲[著](プレジデント社)

〈文芸書ランキング 1月28日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2025年2月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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