【産経Books】『日本戦艦全史 1913~1945』「丸」編集部編

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

■造船大国の礎を見る

先の大戦終結から80年。関連書籍のフェアを展開する書店も多い。そんな中、本書は「大和」など先の大戦に投入された日本の戦艦12隻を貴重な写真とともに紹介した一冊。

全約200ページ。巻頭の約70ページに及ぶグラビアは必見だ。とりわけカラー彩色が施された12隻の姿はリアル。日米開戦前夜の昭和16年10月、就役を控えた「大和」は性能試験のため高知・宿毛湾沖を高速走行、しぶきに覆われながら力強く進む。大分・佐伯沖で停泊中の「比叡」は夕日を背景にシルエットが浮かび上がる。

終戦直後に横須賀軍港で撮影された「長門」の艦内写真もレア。接収のため乗り込んだ米兵によって撮影されたもので、20年7月の空襲で受けた被害が生々しい。爆発によって床面がめくれあがった羅針艦橋、破壊された主砲塔付近、穴の空いた下級士官室の壁面…。「長門」はその後、ビキニ環礁で行われた原爆実験の標的艦となる。敗戦国の戦艦がたどった悲運というべきか。

NHKドラマ「坂の上の雲」の考証を担当した堤明夫・元防衛大学校教授による主砲メカニズム解説や、諸事情により建造に至らなかった「超大和」型など〝幻の戦艦〟ラインアップも興味深い。戦後の造船大国の礎をみる思いだ。(潮書房光人新社・3300円)

産経新聞
2025年2月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

産経新聞社「産経新聞」のご案内

産経ニュースは産経デジタルが運営する産経新聞のニュースサイトです。事件、政治、経済、国際、スポーツ、エンタメなどの最新ニュースをお届けします。