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ゲバルト・ローザ闘争の手記『太陽と嵐と自由を』(ノーベル書房、1969年)
先日、東大入試の合格発表が行われた。見事合格を勝ち取った学生は喜びを噛みしめていることだろう。しかし、かつて厳しい受験競争を勝ち抜いたにもかかわらず、自らを「犯罪者」と呼んで否定した〈東大女子〉がいた。
なぜ彼女は自己を否定し、東大を批判したのか。東大至上主義に抗するさまざまな思想を紹介する『「反・東大」の思想史』(尾原宏之著、新潮選書)から、一部を再編集してお届けする。
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全共闘における東大
戦後の東大の深刻な危機といえば、60年代後半の東大紛争(東大闘争)である。これに関してはおびただしい数の書籍があり、またさまざまな学問分野で研究対象にされ続けてきた。本書の関心は、この紛争が東大という機構に対してどの程度脅威となり得たか、というところにある。
研修医制度をめぐる医学部の問題から始まった東大全共闘の運動は、教授と学生との権威的な支配・被支配関係や、硬直した大学管理のあり方を改革する民主化闘争の枠組を越え、「大学解体」(「東大解体」)や「自己否定」という言葉に象徴される思想運動的な性格を強めたことが指摘される(小熊英二『1968』など)。
「大学解体」とは要するに、日本資本主義を支える学術成果を生産し、また支配体制にエリートを供給する機関としての東大を解体する、ということであり、「自己否定」とは、その東大で学び、エリートとしての輝かしい未来を約束された自分自身を否定する、という意味と解される。
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- 「反・東大」の思想史
- 価格:1,980円(税込)
女性闘士「ゲバルト・ローザ」
では、「東大解体」の担い手は誰か。これが東大「改革」や東大の「民主化」であった場合、その担い手は当然東大の教員や学生ということになるだろう。現に、日本共産党・日本民主青年同盟(民青)系の「民主化」運動は、「全東大人の総団結による東大問題の自主的解決」を訴えた(『勝利へのスクラム』)。東大における大学自治や学問・研究の自由、教育・研究条件が問題なのであれば、それはたしかに「東大人」自身の課題でしかない。
一方、民青系が「他大学の暴力集団」を引き入れていると批判した東大全共闘の「東大解体」は、突き詰めれば誰でも参加可能な間口を持つ。ゲバルト(暴力を意味するドイツ語)で勇名を馳せた東大全共闘の女性闘士「ゲバルト・ローザ」こと柏崎千枝子は次のように語った。
「われわれは今までみずからも知らず知らずのうちにその毒に染まってきた「東大ナショナリズム」と闘うし、「東大闘争」とは「東大生による闘争」という意味ではなく、「全人民による東京大学の死滅、解体に向けての闘争」という意味になるようがんばるだろう」。
民青と全共闘の対立点
柏崎にとって、東大の「改良闘争」には意味がない。東大が存続する限り「人民を抑圧し、支配する“権威”の象徴であり、その傭兵をつくり出す機関」であることは変わらないからである。「東大を根底から解体し、破壊する」ことを柏崎は主張した(『太陽と嵐と自由を』)。
その柏崎の最も憎む敵の一つがほかならぬ民青である。「他大学生は帰れ!」「東大の問題は東大で解決する」という民青の呼号は「極めて右翼的、排外主義的煽動」であり、「東大生の最も醜い他大学生蔑視の風潮」につけこむものだ、と柏崎はいう。
現に、東大闘争には政治党派(民青も含む)の動員などによって多数の「外人部隊」、つまり学外者が参加した。東大全共闘と並び称される日大全共闘も応援出動し、東大構内における民青との武力衝突やバリケードの構築で活躍したことはよく知られている。
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1896年(明治29年)創立。『斜陽』(太宰治)や『金閣寺』(三島由紀夫)、『さくらえび』(さくらももこ)、『1Q84』(村上春樹)、近年では『大家さんと僕』(矢部太郎)などのベストセラー作品を刊行している総合出版社。「新潮文庫の100冊」でお馴染みの新潮文庫や新潮新書、新潮クレスト・ブックス、とんぼの本などを刊行しているほか、「週刊新潮」「新潮」「芸術新潮」「nicola」「ニコ☆プチ」「ENGINE」などの雑誌も手掛けている。
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