プロインタビュアーが実践している失敗しない“アポ取り”の方法 『会う力 シンプルにして最強の「アポ」の教科書』試し読み

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 コネゼロ、知名度ゼロから2000人以上への取材を成功させたプロインタビュアー・早川洋平氏が上梓した『会う力 シンプルにして最強の「アポ」の教科書』。

 本作で早川氏はこれまでの経験から培ってきた、失敗しない「人との会い方」のコツを包み隠さず大公開している。公私で使えるノウハウ満載の一冊だ。

 その中から、「第2章 アポ取りのチャンスはどこにでもある」の一部を公開する。

直接型のポイント(2)まっさらからの申し込みにもチャンスはある

 これは文字通り、先方と何もつながりがないまっさらな状態からアポイントを取る手法です。メディア関係者や大企業の看板を背負える人ならまだしも、「個人の自分にはとても無理」と感じる方もいるかもしれません(僕もそうでした)が、その心配はいったん脇に置き、この先を読み進めていただけたら幸いです。

 高田明さん(ジャパネットたかた創業者)、松田公太さん(タリーズコーヒージャパン創業者)、池谷裕二さん(脳研究者)……振り返れば僕自身もかなりの数の方にこの方法でお目にかかってきました。しかも、人脈も実績もゼロだった駆け出し時代の方がゼロから相手にお目にかかった機会は多いくらいです。自分がどんなに無名であれ、お相手がどんなに有名な方であれ、意義や情熱を感じてもらうことができれば、お目にかかる機会は十分にあります。

 最も参考にしてもらえるのでは、と僕が考えるのは上場企業の経営者Cさんへのアポ取りです。今から15年ほど前のことでした。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼はメディアからひっぱりだこ。起業直後に著作を読んで影響を受けていた僕にとっても、いつか必ず会いたい存在でした。いっぽうで僕の話を聞いた周囲の知人たちが一様に「そんなの無理だ」と苦笑していたことを思い出します。

 しかし何事にも絶対はないと信じていた僕は、王道のアプローチを試みました。彼の会社のWebサイトから直接取材依頼を出したのです。当時の僕にとってはこれしか手段がなかった、と言う方が正確かもしれません。取材内容はシンプル。Cさんに人生のターニングポイントをうかがうというものだったと記憶しています。

 すると数日後には、広報の女性からこんなお返事のメールをいただきました。

「この度はご依頼ありがとうございます。大変ありがたいお話なのですが、Cは現在多忙を極めており、残念ですが今回はお断りさせてください」

 とても丁重な文面でしたが、ここで諦めるわけにはいきません。これまで経験したことのないような緊張と戦いながら、思い切ってメールの署名にあった彼女の直通番号に電話をかけました。そして、取材を検討してくださったお礼を述べたうえで、「自分がなぜこの企画を提案したのか。どうすれば今後インタビューを受けていただける可能性があるのか」をなるべくていねいに、慎重にうかがいました。

 その当時、彼女のもとには星の数ほど取材依頼があったでしょうし、NG回答をすることも多かったことと思います。しかし、「お断り」の後に直接電話をかけてくる僕のような相手はそうそういなかったようで、電話口に出た彼女は驚いているようでした。数秒の沈黙を経て彼女はこう答えてくれました。

「大変申し上げにくいのですが、Cは時間対効果を考えてメディアに出演させていただいております」

 確かにCさんは大手メディアの取材はいくつか受けていました。もちろん僕の番組では、影響力や実績に劣るのは動かしがたい事実。情熱だけが先走り、今考えれば企画内容も甘かった自分が、彼らと同じ土俵に立って勝負になるはずもありません。

僕は、もっとCさんや広報の方が意義を感じてくれる取材テーマはないだろうかと、わずか数秒の間に思いを巡らしました。そこで浮かんだのが彼の著作に関するインタビューです。アポ当時、Cさんに新刊の予定はありませんでした。しかし、以前足を運んだ彼の講演会でのこんな話を思い出したのです。

「僕の講演料は高いんです(笑)。でもそれはいただいたお金を教育の機会に恵まれない海外の子どもたちのための学校設立資金にあてたいから。僕が本を書くのもその印税を同様の目的に使いたいからなんです」

 すでに刊行されていた彼の著書にも、巻末に必ずその旨が書かれていました。僕は広報の女性にこうお伝えしました。

「それではCさんが次に新刊をリリースされるタイミングであれば、再度ご検討いただくことは可能でしょうか。僭越ながら私の番組には、『本好き』のリスナーさんが国内外に数多くいます。ですから刊行時にインタビューを配信できれば、彼らにCさんの思いを届けると同時に、新刊やその他の著作を購入していただく機会にもつながると思っております」

 次の瞬間、彼女の表情がそれまでとは一転、やわらかくなるのが電話口からも分かりました。

「ありがとうございます。そのように仰るということは、ご存じのようですね。Cが本を書くのは海外の子どもたちの学校設立のためです。想いは承りました。新刊リリース時であれば可能性はあると思いますので、またお声かけいただけますでしょうか」

 もちろんこの時点で、取材のOKをいただいたわけではありません。社交辞令では?と感じる方もいるかもしれません。しかし電話越しとはいえ、伝わってくる彼女の声に偽りは感じられませんでした。となれば、僕自身の人間力とメディアの力を高めながらその時を待つしかない――そう決めて電話を終えました。

 そして半年ほど経った頃でしょうか。Cさんが新刊を出すことを知った僕は、広報の女性に連絡をしました。すると「再度のご依頼ありがとうございます。気にかけていただきうれしく思います。ご取材、喜んで受けさせていただきますね」と快諾のお返事をいただくことができました。

 この経験から学んだのは、リサーチはアポ取りのさなかにあってもできるということ。お相手や関係者と直接やりとりするからこそ、事前リサーチだけでは見えてこない先方の想いやニーズを汲み取る機会にも恵まれます。なぜNGだったのかを丁寧に、かつ率直にうかがってみる。メールだけだと思いを推し量るのは難しいなと感じたり、こちらの意図が伝わり切っていないなと感じたりしたら、できるだけリアルに近い手段でコミュニケーションを図ってみることをおすすめします。

 もちろん、一度断られたお相手に電話をかけるのはとてつもなく緊張するものです。しかし、勇気を出してこのリアクションをとれるかどうかが、特にゼロからアポ取りする場合に成否を分けるのも事実です。メールでやりとりしたとはいえ、先方にとってあなたはまだ一度も会ったことのない、どこの誰だかわからない存在です。でもだからこそ、文字だけでなく肉声を通してあなたがどういう人間か、より多くの情報をお伝えすることが大切になってきます。

 では、NG理由をうかがっても明確にお答えいただけなかったり、そもそも電話に応答いただけなかったりする場合はどうすればよいでしょうか――そんな時、しつこく理由をうかがったり、何度もご連絡したりするのはもってのほかです。なぜうまくいかなかったのかを改めて自分で考え抜くこと。加えて、誰かに客観的な意見をもらうこともおすすめします。その「誰か」はあなたに忖度しない相手が良いでしょう。耳が痛いことも言われるかもしれません。しかし、その声と真摯に向き合い、改善を施してアポ取りにリトライしてみること。そして、たとえ一度や二度ダメでもこれを愚直に繰り返していくことが大切です。

以上は本編の一部です。詳細・続きは書籍にて

早川洋平
1980年、横浜生まれ。中国新聞記者等を経て2008年起業。羽生結弦、吉本ばなな、高田賢三、ケヴィン・ケリーら各界のトップランナーから市井の人々まで国内外分野を超えてインタビューを続ける。2013年からは戦争体験者の肉声を発信するプロジェクト『戦争の記憶』にも取り組む。『We are Netflix Podcast@Tokyo』『横浜美術館「ラジオ美術館」』『石田衣良「大人の放課後ラジオ」』等メディアプロデュースも多数。インタビューメディア『LIFE UPDATE』配信中。

プロインタビュアー早川洋平Webサイト

新潮社
2025年4月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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1896年(明治29年)創立。『斜陽』(太宰治)や『金閣寺』(三島由紀夫)、『さくらえび』(さくらももこ)、『1Q84』(村上春樹)、近年では『大家さんと僕』(矢部太郎)などのベストセラー作品を刊行している総合出版社。「新潮文庫の100冊」でお馴染みの新潮文庫や新潮新書、新潮クレスト・ブックス、とんぼの本などを刊行しているほか、「週刊新潮」「新潮」「芸術新潮」「nicola」「ニコ☆プチ」「ENGINE」などの雑誌も手掛けている。

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