第2回東京中野文学賞 大賞は羽田圭介さん「その針がさすのは」

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中野から世界へ発信する「東京中野文学賞」

中野から世界に向けて新たな物語を発信することを目的につくられた「第2回 東京中野文学賞」(主催:一般社団法人中野区観光協会・東京中野文学賞実行委員会)の授賞式が3月29日(土)、中野区役所内のイベントスペース、ナカノバで開催。約200人の観客が集まる中、大賞、佳作、中野区賞と今回新設されたクラファン賞の発表、授与が行われました。

プロ・アマ、年齢・ジャンルを問わず、マンガ・映像・演劇化などを視野にいれた幅広い作品を募集する本文学賞。応募総数216の中から一次選考で46編、二次選考で8編の作品が選出。小説家の中島京子氏、映画監督の篠原哲雄氏、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ氏、作家のエージェント会社代表、小説家の鬼塚忠氏の最終選考委員により8作品の中から大賞1作品、佳作2作品と、中野区に関係する場所や人物などを題材にした中野区賞1作品が選ばれました。また、今年初の試みとしてわれたクラウドファンディング支援者132名が最終選考通過作品に投票し、選定される「ナカぶんクラファン賞」も発表されました。

大賞は羽田圭介さん

大賞とクラファン賞は、芥川賞受賞作家、羽田圭介さんの「その針がさすのは」。
佳作は六ッ川和泉さんの「軌道、レゾナント」、ふるたみゆきさんの「檸檬と蜜柑のラプソディ」の2作品。
中野区賞は宮本直樹さんの「10円玉を握りしめたら」が受賞。

授賞式では、最終選考委員が各賞のプレゼンターを務め、受賞者による喜びのコメントも発表されました。


羽田圭介さんは、書き上げた後、送るのをためらい迷ったと告白。
「仕事の合間に見つけた募集要項を見て、プロアマ問わずとあったことや、東京の、中野というローカルな文学賞って面白いなと心に残っていた。
日頃、単品では小説にできない小ネタをネタ帳に書き留めている。文学賞を意識し始めたことでその小ネタがどんどん結びつき、作品となった。
例えると、手元にある野菜の端材を「中野」という熱伝導率の良い「鍋」で煮込んだら、おいしい出汁ができたようなイメージ。
「東京中野文学賞」という賞がなければ生まれなかった小説。中野で生活する人や多くの人に読んでもらい、小説の「鍋」となった中野の良さに気づいてもらえるきっかけとなれば嬉しい」
とスピーチし、会場から拍手喝さいをうけていました。

羽田圭介さんの「その針がさすのは」は文芸誌「新潮」4月7日発売号で全文掲載されます。

最終選考委員を務めた大槻ケンヂさん、中島京子さんのコメント

今回初めて最終選考委員に参加したロックミュージシャンの大槻ケンヂさんは、
「8作品どれも面白かった。大賞を受賞した羽田さんの作品は群像劇。一人一人の人間が色濃く描かれていたのが印象的だった」
とコメント。

前回から最終選考委員を務める作家の中島京子さんは、
「若い人が主人公だったり、青春時代の人との出会いや挫折を通して人が成長していく時間の厚みのようなものが描かれた、”中野”という一つの大きな物語が共有された作品が多く、読んでいて楽しかった。大賞を受賞した羽田さんの作品は小説としての完成度、文章の強度が素晴らしかった。小説としての完成度は劣るものの、佳作の六ツ川さんの作品も描写や設定に魅力がありとても映像的だった。中野区賞は自身でエントリーする面白い方式を取っている文学賞だが、中野的ディテールを書き込んだ作品もあり、楽しく読めた」
とコメントし、今後の東京中野文学賞への期待を寄せていました。

アップルシード・エージェンシー
2025年4月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

アップルシード・エージェンシー

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