仕事ができない人と仕事ができる人…学力やIQでは測れない非認知能力とは

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学力やIQでは測れない非認知能力

 勉強はできるけれど仕事ができない人や勉強のできは普通だけれど仕事ができる人がいます。

 そこには学力やIQでは測れない非認知能力があると、四半世紀以上に及ぶ教育実践の経験をもつ、All HEROs合同会社代表の中山芳一さんは言います。

 では、現代社会において必要不可欠だという非認知能力とは何なのでしょうか? 中山さんが監修した『サクッとわかるビジネス教養 非認知能力』(新星出版社)より、一部抜粋・編集してお届けします。

学業や仕事に必要不可欠な「非認知能力」

 学力やIQは、仕事の能力や評価に直結しているわけではありません。どんなに学力が高くても、仕事で使いこなせず、意欲や持続力、思いやりといった学力以外の能力が劣っていては、仕事での評価が上がらないどころか、マイナスの評価をされてしまうこともあります。

 一方で、自分の学力と現在の仕事を照らし合わせて、「こんなふうに学力を活かしてみよう」と思える意欲や柔軟性があり、まわりの人とうまく協調できる人は、たとえ学力がほどほどであっても、仕事の能力や評価が高まる傾向にあります。

 これらの力は、「非認知能力」と呼ばれ、学力やIQの向上を支えたり、仕事や人間関係を円滑にしたりするには必要不可欠なものです。

3つの非認知能力とは?

 非認知能力は、自分の内面にかかわる「対自的な力」と、他者とかかわる「対他的な力」の2つに大きく分けたうえで、「自分を高める力」「自分と向き合う力」「他者とつながる力」の3つに分類することができます。

 これらの3つの能力群は、気質や人格のように個人に深く根づいているものではなく、いずれも意識することで変えられる・高められる力です。

 また、それぞれの力は、個別で獲得・向上に至ることはなく、多くの場合はいくつかの力と関連しながら獲得され、向上していきます。たとえば、自制心という「自分と向き合う力」があるからこそ、自分の我を出さずに他者と協調できる「他者とつながる力」を発揮できるように、それぞれの非認知能力はつながりをもっているのです。

■自分を高める力
「私ならできる!」と自分の可能性を信じている人。困難やピンチの状況も「何とかなる」という楽観性をもち、何事にも「楽しそう!」「もっとやってみたい!」といきいきと取り組める。

・自信をもって取り組める
・前向きな姿勢を持てる
・積極的に行動できる
・いろいろなこと、新しいことに挑戦する

■自分と向き合う力
 喜怒哀楽の感情に流されない人。たとえ激しい感情が湧きあがっても「私は今、怒っているんだな」と客観的にとらえられる。また、つらいことにもグッと耐えられ、気分を上手に切り替えて自分をフラットな状態に戻すことができる。

・困難なことに我慢強く挑む
・いつも安定して落ち着きがある
・計画通り忠実に忍耐強く行える
・気持ちの切り替えが上手

■他者とつながる力
 相手および仲間の気持ちを想像でき、そのときどきで周囲に合わせて人付き合いができる人。相手とのコミュニケーションでは、言葉だけでなく、表情や話し方などでも意思疎通をはかることができる。

・他者との関係をうまく築ける
・相手の立場や気持ちを考えるのが得意
・さまざまな交流をはかれる
・意思疎通がとれ、チームで動ける

認知能力は非認知能力に支えられている

 学力や実務能力といった認知能力は、非認知能力に支えられてこそ伸びやすくなるものです。

 たとえば、現在、学業の成績が悪かったとしても、勉強に取り組もうとする意欲や忍耐力、理解できない部分について「教えて!」と尋ねられるコミュニケーション力など、いくつかの非認知能力が向上すれば、やがて成績も伸びる可能性があります。

 また、勉強に意欲的に取り組む姿を「がんばっているね」と評価されれば、「私ってけっこうすごいんじゃない?」と自信(非認知能力のひとつ)を持てるようにもなり、さらに努力ができるようになって、成績もより向上していく……といった好循環を生み出すことができるでしょう。

 このように努力した結果、すぐに成績が伸びなかったとしても、「努力のムダ」などと思わずに、「ここまでがんばれたのはすごい」と前向きに考えられる力や、くじけずに何度もチャレンジする力、さまざまな勉強法を試してみる柔軟性も、すべて非認知能力です。これらが伸びることも、成績が上がるといった認知能力の向上につながります。

価値観・信念を変えれば非認知能力は伸びる

 そして、私たちの内面に深く関わる非認知能力を伸ばすうえでは、価値観・信念を変化させることが大切です。

 現在の価値観・信念をあえて変えてみれば、それに基づいていた思考や行動までもが変わり、「自分のやりたいことをする」「自分の人生を自分でコントロールする」といった、「自分軸を持った生き方」ができるようになるのです。

 非認知能力は、外側から無理に価値観を押しつけられたり、強いられたりすることでは決して伸びていかないのです。

能力の高さより状況に合った発揮の仕方を

 非認知能力は、その発揮の仕方でプラスにもマイナスにも働きます。

 たとえば、非認知能力のひとつである「自信」を強く抱いている人がいるとしましょう。その人が、手間がかかりそうな新しい仕事に対し、自分はできる自信がある!」と率先して取り組んだとしたら、「自信があって、実力もあるんだなぁ」「堂々としていて魅力的」などと、まわりからよい評価を得られるはずです。しかし、場面を選ばずにいつも自信たっぷりの態度をとっていたら、「自信家で鼻にくなぁ」などと、マイスの評価をされてしまうこともあります。

 このように、非認知能力は、認知能力のように「能力は高いほどいい」といったものではなく、タイミングや状況に合ったアウトプットを行い、周囲や自分が心地よくいられるかも重要なのです。

中山芳一(ナカヤマヨシカズ)1976年1月、岡山県岡山市生まれ。All HEROs合同会社 代表。IPU・環太平洋大学 特命教授。元岡山大学教育推進機構 准教授。岡山大学教育学部卒業後、1999年当時は岡山県内に男性たった一人といわれた学童保育指導員として9年間在職。以降は、教育方法学研究の道へと方向転換する。幼児教育から小中高の学校教育まで、様々な教育現場と連携した実践研究を進める中、岡山大学で学生たちのキャリア教育の主担当教員となる。そして、四半世紀以上に及ぶ小学生と大学生に対する教育実践の経験から、「非認知能力の育成」という共通点を見出し、全国各地で非認知能力の育成を中心とした教育実践の在り方を提唱してきた。また、若者たちへの社会進出支援や企業向けセミナーなど、社会人を対象とした活動も精力的に行っており、非認知能力の重要性をあらゆる世代に発信している。主な著書に、『教師のための「非認知能力」の育て方』(明治図書)、『「やってはいけない」子育て―非認知能力を育む6歳からの接し方』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。共著書、監修書も多数。

監修:中山芳一 イラスト:まつむらあきひろ アイキャッチ画像:maroke/Shutterstock

Fun-Life!
2025年5月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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