
※画像はイメージです
今、大阪・関西万博(正式名称は2025年日本国際博覧会)が盛り上がりを見せ、諸外国の文化に関心が集まっています。
パビリオンが未完成のネパール、アフタヌーンティーが話題となったイギリス…それぞれの国民性が話題になりました。
諸外国の特徴が話題になることで各国の文化の違いに興味を持った人も多いかもしれません。
そこで本記事では、長年異文化理解・コミュニケーションをテーマに教育活動を行ってきた東京外国語大学教授・岡田昭人氏が、各国の意外な「色」の捉え方について解説します。
※本稿は『教養としての「異文化理解」』の一部を抜粋・再編集しています
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- 教養としての「異文化理解」
- 価格:2,200円(税込)
■色は感情や思考、人に与える印象を左右する
外見など視覚的な要素(Appearance & Artifacts)がコミュニケーションに与える影響についての研究は数多く行われており、一般的に、服装やアクセサリーは、相手に対する信頼感やプロフェッショナリズムを伝えるための重要な手段とされています。
なかでも、服装の色が感情や印象に与える影響は、心理学的にも文化的にも興味深いテーマです。色は単に見た目の美しさを左右するだけでなく、私たちの感情や思考、そして他者に与える印象に強い影響を与えます。さらに、色の解釈は文化ごとに異なり、同じ色が文化によって違う意味を持つことがあるのです。
●赤や黒→強さと権威を象徴
赤は情熱、エネルギー、そして権威を象徴する色です。ビジネスシーンでは、重要なプレゼンテーションや交渉の場面で「自信を持って相手に訴える」ために赤のネクタイをつけることがよくあります。
この行為は、「パワータイ」とも呼ばれ、相手に力強さや決意を印象づける手段として使われます。アメリカの政治家やビジネスリーダーが赤のネクタイをよく身につけるのは、リーダーシップや権威を強調するためです。
一方、黒はシンプルでありながら強力な色で、特にビジネスの場では、威厳やプロフェッショナリズムを象徴します。フランスやイタリアのビジネスシーンでは、エレガントな黒のスーツが一般的で、高級なレストランや重要なビジネスディナーにおいては黒いスーツやドレスが好まれます。洗練さとともに、無言の圧力やリーダーシップを示す効果が、黒にはあるからです。
●青や緑→信頼と安定を象徴
青は冷静さ、信頼、そして安定を表します。銀行や保険会社などの金融機関で、ロゴや制服に青を取り入れることが多いのはこのためです。「信頼されたい」「安心感を与えたい」というメッセージを送るため、重要なビジネス交渉や顧客対応の場面での服装にも青はよく使われます。企業の営業担当が青いスーツを着ることで、顧客に「信頼できる」「誠実である」といった印象を与えることができるのです。
一方、緑は自然や癒しを連想させる色で、リラックス感や調和を表すため、クリエイティブな職場やストレスの多い環境でよく使用されます。デザイナーやアーティストが集まる会議に、緑の服装を選んで参加すれば、クリエイティブなアイデアが生まれやすい環境をつくり出すことができるとされています。また、カフェやリラクゼーションスペースで働くスタッフが緑のエプロンを着用することが多いのも、顧客に安心感やリラックス効果を与えるためだといわれています。

色に関するイメージの国際比較
■文化によって違う色の意味
欧米諸国では、ビジネスの場でも色彩の選択に自由があり、個性やスタイルが尊重されます。例えば、イタリアではファッションセンスが重要視され、色の組み合わせやアクセサリーにもこだわりが見られます。ビジネスシーンでも、鮮やかな色のスカーフやタイを身につけることで、自己表現を行うことが一般的です。
また、アメリカのスタートアップ企業では、カジュアルな服装が許容されるため、個々の社員が自分の好みの色を取り入れた服装を選ぶことが多く、職場内でもカラフルな雰囲気が漂っています。
「中国で緑の帽子はNG」という話は、文化的にユニークなエピソードとして知られています。中国では、男性が緑の帽子をかぶることは「妻(恋人)に浮気されている夫(恋人)」を示すという意味を持つのです。
あるアメリカ人ビジネスパーソンが中国に出張した際、緑色のキャップをかぶって街を歩いていました。彼は普段から緑が好きで、特にその帽子はお気に入りだったため、会議前にそれをかぶって取引先に向かいました。道中、彼は多くの人に変な視線を向けられたり、クスクス笑われたりしたことに気づきました。当初、そのアメリカ人は理由がまったくわからなかったといます。帽子の色ですらも、文化的な意味合いを持ってしまうことがあるのです。
ここに掲げたのはほんの一例ですが、異文化間の非言語コミュニケーションの違いを理解することで、相手の言葉の背後に隠れた意図や感情を読み取ることもできるでしょう。
岡田 昭人 (おかだ あきと)
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。留学生教育学会副会長。Oxford-Cambridge Society会員。ニューヨーク大学大学院で異文化コミュニケーション学の修士号を、オックスフォード大学大学院にて教育学博士号を取得。東京外国語大学で25年にわたり日本人と留学生に教育学や異文化コミュニケーション学を指導。講演会やセミナー、執筆などを通じて異文化理解活動に務めている。著書に『世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方』(朝日新聞出版、『人生100年時代の教養が身に付く オックスフォードの学び方』として文庫化)、『オックスフォード流 自分の頭で考え、伝える技術』(PHP研究所)、『教育学入門 30のテーマで学ぶ』(ミネルヴァ書房)などがある。
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